この記事の要点:和猫(日本猫)は品種ではなく日本在来の猫の総称で、尾の形も個体差です。対してジャパニーズボブテイルはTICAが1979年に公認した国際的な品種で、この2つは明確に別物です。招き猫の名称は1852年の『藤岡屋日記』が初出とされ、歌川国芳は生涯を通じて十数匹の猫を愛した絵師として知られています。「和猫って、結局どういう猫のことですか?」「ジャパニーズボブテイルと何が違うんですか?」——Flowens Catにはこうしたご質問がときどき届きます。
ネット上の「和猫・日本猫」記事の多くは、奈良時代の輸入起源説と柄の一覧、豪徳寺や浅草の招き猫伝説を紹介して終わります。今回、上位表示されているサイトを6件確認しましたが、招き猫の名称がいつ・どの資料に初めて登場したかまで踏み込んだ記事、歌川国芳の猫好きエピソードに触れた記事、そして和猫とジャパニーズボブテイルの違いを「品種として国際公認されているか否か」という軸で正面から整理した記事は見当たりませんでした。
Flowens Catは関東5・中部3の全国8拠点でマンチカン・ラグドール・サイベリアンなど9品種を扱っていますが、和猫(雑種)もジャパニーズボブテイルも取り扱っておりません。だからこそ、どちらかを売りたい立場ではなく、歴史と遺伝の事実をそのまま中立にお伝えできます。柄シリーズ13本の一次データを持つブリーダーとして、和猫の柄が今の純血種にどう息づいているかまで橋渡ししていきます。
---
和猫(日本猫)とは?品種ではなく「総称」という基本
結論からお伝えすると、和猫(日本猫)は特定の品種名ではなく、日本に古くから住み着いてきた猫全般を指す総称です。短毛・丸顔・中肉中背で、尾はまっすぐな長尾から曲がった鉤尾(かぎしっぽ)までさまざまな形が混在します。多くのサイトが紹介する「奈良時代に仏教伝来とともに中国からネズミ捕りとして持ち込まれた」という説は広く知られていますが、後述の通り、実はそれより古い時代の猫の痕跡も見つかっています。
アニコム損保が2026年2月に発表した「家庭どうぶつ白書2026」(0歳猫54,764頭対象の調査)によると、混血猫(和猫の系譜にあたる雑種)は全体の11.2%を占め、純血種ではスコティッシュフォールド(13.7%)に次いで2番目に多いグループでした(アニコム損保「家庭どうぶつ白書2026」)。今も日本の飼い猫の主流の一角を占めているのが、和猫という存在です。
---
和猫の歴史年表|猫の骨の出土から「標準」試案まで

和猫の歴史をたどると、奈良時代の輸入起源説よりもさらに古い記録があります。Wikipedia「日本猫」の項目が脚注に一次資料を明記した年表を整理すると、次のようになります(Wikipedia「日本猫」)。
| 時代・年 | できごと |
|---|---|
| 弥生時代 | 長崎県壱岐市のカラカミ遺跡から猫の骨が出土(当時すでに猫が日本列島にいた可能性を示す) |
| 705年 | 『日本霊異記』に猫についての記述 |
| 889年 | 宇多天皇が日記に自身の飼い猫について記録 |
| 1602年 | 猫の放し飼いを命じる高札が出される(つなぎ飼いの禁止) |
| 1971年 | 動物文学者・平岩米吉が「日本猫の標準」試案を発表 |
---
招き猫の起源|伝承と一次資料の記録を分けて整理する

招き猫の由来として最もよく紹介されるのは「豪徳寺(世田谷区)の井伊直孝を招き入れた猫」「浅草の老婆が観音のお告げで猫の姿を人形にした」という2つの伝承です。ただし、この2つはあくまで「伝承」であり、いつ・どの資料に記録されたかを明示できるものではありません。
一方で、Wikipedia「招き猫」の項目には、伝承とは別に一次資料に近い記録が明記されています(Wikipedia「招き猫」)。嘉永5年(1852年)の『藤岡屋日記』に「招き猫」という名称そのものの初出記録があり、同じ1852年に歌川広重が描いた浮世絵『浄るり町繁花の図』には、丸〆猫(まるしめのねこ)と呼ばれる猫の人形を売る店の様子が描かれています。つまり、伝承としての起源話は諸説あるものの、「招き猫」という名称と、それを商品として売る店が実在したことを示す記録は、1852年という具体的な年に集中しているのです。
今回確認した競合サイトの中には、豪徳寺や浅草の伝承止まりのものが大半で、この1852年の記録まで踏み込んだ記事は見当たりませんでした。伝承と記録を分けて理解することが、招き猫の由来を正しく知る第一歩だと考えています。
---
歌川国芳と猫の浮世絵|十数匹を愛した絵師のエピソード
江戸期の「猫と浮世絵」を語るうえで欠かせないのが、浮世絵師・歌川国芳です。国芳は生涯にわたって常時数匹から十数匹の猫を飼っていたと伝えられており、単なる愛猫家というレベルを超え、死んだ猫のために仏壇を用意し、戒名の位牌や過去帳まで作っていたというエピソードが残っています(Wikipedia「歌川国芳」、刀剣ワールド/浮世絵「浮世絵師『歌川国芳』の生涯」)。
代表作としては、1848年の『其のまゝ地口 猫飼好五十三疋』(東海道五十三次の宿場名を猫のポーズや鳴き声のダジャレに見立てた作品)、1841年の『猫のけいこ』などが知られています。これらは単なる猫の絵ではなく、国芳自身が日常的に猫を観察し続けていたからこそ描けた作品だと言えます。江戸時代の人々にとって猫がどれほど身近な存在だったかを示す象徴的なエピソードですが、今回確認した競合6サイトのいずれも国芳には触れていませんでした。
---
和猫とジャパニーズボブテイルは何が違う?国際公認品種か否かで整理

「和猫とジャパニーズボブテイルは同じものですか?」というご質問もよくいただきますが、答えは「いいえ」です。多くのサイトは「日本猫が海外に渡って改良された品種」という一文で済ませていますが、両者の違いは「品種として国際公認されているかどうか」という一点に集約できます。
ジャパニーズボブテイルは、1968年に北米へ導入され、国際猫協会TICAによって1979年にショートヘア、1991年にロングヘアがそれぞれ公認品種として認定されました(TICA公式ブリードスタンダード)。体重区分や尾の形状まで含めた明確な繁殖基準・品種基準を持ち、日本での存在は少なくとも1,000年に及び、15世紀のスミソニアン所蔵絵画にも描かれているとTICAは説明しています。
| 比較項目 | 和猫(日本猫) | ジャパニーズボブテイル |
|---|---|---|
| 定義 | 品種ではなく、日本在来猫の総称 | TICA公認の国際的な品種 |
| 公認団体 | なし(品種登録の対象外) | TICA(1979年ショートヘア/1991年ロングヘア認定) |
| 海外での歴史 | ― | 1968年に北米へ導入 |
| 尾の形 | 個体差が大きく、長尾も鉤尾も混在 | 固定された品種標準として繁殖される |
| 繁殖基準 | なし | 体格・尾の形状など明確な基準あり |
---
和猫に多い柄は、今の純血種にどう息づいているか

和猫の柄といえば、キジトラ・サバトラ・茶トラ・黒猫・白猫・ハチワレ・三毛・サビといった柄が代表的です。ここでは単なる柄の羅列ではなく、「和猫でよく見られてきた柄が、今の純血種ではどう受け継がれているか」という橋渡しをお伝えします。
アイリスペットどっとコムが実施した「猫の国勢調査2019」(会員飼育猫1,702匹対象)では、和猫にも多いキジトラが1位(197匹)、僅差の2位が黒白ハチワレ系(187匹)でした(Cat Press経由で確認)。江戸時代の浮世絵に描かれた猫にも、こうしたトラ柄や三毛柄が多く見られます。
| 和猫でよく見られる柄 | 遺伝のしくみ(概要) | Flowens Cat取扱品種で出会える例 |
|---|---|---|
| キジトラ・サバトラ・茶トラ | Taqpep遺伝子による縦縞模様 | アメリカンショートヘア・ノルウェージャンフォレストキャット・マンチカン・ブリティッシュショートヘア |
| 黒・白の単色 | 縞を消す遺伝子を劣性ホモで持つ個体 | ラグドールを除く8品種 |
| ハチワレ・キジシロなどのバイカラー | KIT遺伝子による白斑の量・位置の違い | マンチカン・ノルウェージャンフォレストキャット・ラグドール・ブリティッシュショートヘア |
| 三毛・サビ | X染色体上の遺伝子でオレンジと黒を切り替え | アメリカンショートヘア・ノルウェージャンフォレストキャット・サイベリアン |
それぞれの柄の性格傾向・実地データは、柄シリーズ各記事で1本ずつ検証しています。
---
柄・毛色を判定する遺伝子検査は行っていません
正直にお伝えすると、Flowens Catでは親猫に対して多発性嚢胞腎・肥大型心筋症2種・ピルビン酸キナーゼ欠損症といった全品種共通の遺伝子検査(品種によっては追加検査あり)を実施していますが、柄や毛色そのもの(白斑遺伝子の量や毛色の濃淡など)を判定する遺伝子検査は行っていません。「和猫っぽい柄の子が生まれますか」というご質問には、成長を見守っていただくしかない、というのが誠実なお答えです。
関東5・中部3の全国8拠点で常時140頭前後の子猫と日々向き合ってきた実感として、性格を左右するのは柄そのものよりも、親猫の気質と子猫期の社会化のほうがはるかに大きいと感じています。同じ両親から生まれた兄弟猫でも、柄が違えば性格まで違うと思われがちですが、実際には柄が違っても性格は似る傾向のほうが強く見えます。「柄で性格を占う」よりも、親猫の様子や育った環境を確認するほうが、実際の性格を知る手がかりになるというのが繁殖現場からの実感です。
---
よくある質問
Q. 和猫(日本猫)とはどんな猫のことですか?
品種名ではなく、日本に古くから住み着いてきた猫全般を指す総称です。短毛・丸顔・中肉中背で、尾は長尾から鉤尾(かぎしっぽ)まで個体差があります。アニコム損保「家庭どうぶつ白書2026」によると、混血猫(和猫の系譜)は0歳猫全体の11.2%を占め、純血種の中で最も多いスコティッシュフォールド(13.7%)に次ぐ規模です。
Q. 和猫とジャパニーズボブテイルは何が違いますか?
最大の違いは「品種として国際公認されているか否か」です。和猫は総称であり品種登録の対象外ですが、ジャパニーズボブテイルはTICAが1979年にショートヘア、1991年にロングヘアを公認した国際的な品種で、明確な繁殖基準を持ちます。尾の形も、和猫では個体差ですが、ジャパニーズボブテイルでは品種標準として固定されています。
Q. 招き猫のモデルになった猫はいますか?
豪徳寺(世田谷区)や浅草の伝承がよく紹介されますが、いずれも「伝承」であり出典が明確な記録ではありません。一次資料に近い記録としては、嘉永5年(1852年)の『藤岡屋日記』に招き猫の名称の初出があり、同年の歌川広重の浮世絵にも猫の人形を売る店の様子が描かれています。特定の1匹がモデルだったと断定できる記録は確認できていません。
Q. 日本猫にはどんな柄が多いですか?
猫の国勢調査2019(会員飼育猫1,702匹対象)では、キジトラが1位(197匹)、僅差の2位が黒白のハチワレ系(187匹)でした。和猫にはこのほか茶トラ・三毛・サビ・黒・白など多様な柄が見られます。柄ごとの詳しい遺伝の仕組みは猫の柄・模様一覧で解説しています。
Q. 和猫っぽい柄の純血種に出会うことはできますか?
はい。Flowens Catの取扱9品種の中にも、キジトラ・ハチワレ・三毛(キャリコ)など和猫でよく見られる柄が公式カラーとして含まれる品種があります。ただし柄・毛色そのものを判定する遺伝子検査は行っていないため、「必ずこの柄が生まれる」という確約はできません。現在ご案内できる子猫は子猫一覧からご確認いただけます。
---
まとめ——和猫は「総称」、ジャパニーズボブテイルは「品種」
和猫(日本猫)は特定の品種ではなく、日本に古くから暮らしてきた猫全般を指す総称です。奈良時代の輸入起源説より古い弥生時代のカラカミ遺跡の猫の骨、705年『日本霊異記』、889年宇多天皇の日記といった記録が、和猫の長い歴史を物語っています。
- 和猫とジャパニーズボブテイルの違い:品種として国際公認されているか否かが最大の分岐点。ジャパニーズボブテイルはTICAが1979年・1991年に認定した国際品種
- 招き猫の起源:伝承としては豪徳寺・浅草説があるが、一次資料としては1852年の『藤岡屋日記』が名称の初出
- 江戸期の猫文化:歌川国芳は十数匹の猫を愛し、猫のための仏壇や戒名まで用意していた
- 柄と純血種の橋渡し:和猫に多いキジトラ・ハチワレ・三毛などの柄は、Flowens Catの取扱品種にも公式カラーとして受け継がれている
Flowens Catは和猫(雑種)もジャパニーズボブテイルも取り扱っていない中立な立場から、歴史と遺伝の事実をそのままお伝えしてきました。もし柄や品種そのものに興味を持たれた方は、品種一覧ページや健康管理ページ、お迎えの流れもあわせてご覧ください。現在ご案内できる子猫は子猫一覧からご確認いただけます。
---
出典
- アイリスペットどっとコム「猫の国勢調査2019」(Cat Press経由で確認). https://cat-press.com/survey/cat-census-2019
- アニコム損保「家庭どうぶつ白書2026」(2026年2月発表). https://www.anicom-sompo.co.jp/nekonoshiori/10392.html
- TICA(国際猫協会)「Japanese Bobtail Breed Standard」. https://tica.org/breed/japanese-bobtail/
- Wikipedia「日本猫」. https://ja.wikipedia.org/wiki/日本猫
- Wikipedia「招き猫」. https://ja.wikipedia.org/wiki/招き猫
- Wikipedia「歌川国芳」. https://ja.wikipedia.org/wiki/歌川国芳
- petokoto.com「日本猫」(獣医師・佐藤貴紀氏監修記事、中京大学・野澤謙教授の調査に言及). https://petokoto.com/articles/1502
- 壱岐新聞「判明!!日本最古のイエネコの骨『カラカミ遺跡』遺構から発掘」(Wikipedia「日本猫」が一次情報として引用). http://iki-guide.com/?p=1721
- 刀剣ワールド/浮世絵「浮世絵師『歌川国芳』の生涯」(Wikipedia「歌川国芳」が猫飼育エピソードの出典として引用). https://www.touken-world-ukiyoe.jp/ukiyoe-artist/utagawa-kuniyoshi/
参考文献・出典9件
- cat-press.com/survey/cat-census-2019
- www.anicom-sompo.co.jp/nekonoshiori/10392.html
- tica.org/breed/japanese-bobtail/
- ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%8C%AB
- ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%9B%E3%81%8D%E7%8C%AB
- ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%8C%E5%B7%9D%E5%9B%BD%E8%8A%B3
- petokoto.com/articles/1502
- iki-guide.com/
- www.touken-world-ukiyoe.jp/ukiyoe-artist/utagawa-kuniyoshi/



