
目次ひらく(全12章)
この記事の要点:猫の夜鳴きは年齢・病気・暮らし方によって原因が大きく異なります。15歳以上の猫の約50%に、認知機能の低下による行動の変化(CDS)が見られたという調査があり(McGrath らのレビュー、2024年が紹介)、就寝前の「狩猟模倣遊び→夕食→消灯」ルーティンや年齢別の受診判断を解説します。
猫の夜鳴きとは?原因は「生理的・心理的・病的」の3分類
猫の夜鳴き(夜泣き)とは、深夜〜早朝に繰り返す大きな鳴き声のことです。原因は大きく3種類に分けられます。
| 分類 | 主な原因 | 多い年齢 |
|---|---|---|
| 生理的 | 空腹・のどの渇き・トイレの汚れ・発情 | 全年齢 |
| 心理的 | 孤独感・環境変化・ストレス・認知的混乱 | 子猫・高齢猫 |
| 病的 | 痛み・甲状腺(こうじょうせん)機能亢進症・認知症・高血圧など | 成猫〜高齢猫 |
「アオーン」という鳴き声が気になる方へ — 年齢で意味が変わる

猫のアオーンという鳴き声は年齢・状況によって意味が異なり、高齢猫の場合は病気のサインであることがあります。この鳴き声は月間1,300件(2026年4月時点・Ubersuggest調べ)と非常に多くの飼い主が気にしているポイントです。
若い成猫のアオーン(1〜6歳前後・未去勢・未避妊)
発情が主な原因です。メス猫は低くうなるように長く伸ばした声で繰り返し鳴き、オス猫は窓の外に向かってアオーンと大声を出し続けます。リズムが一定で、腰を低く落とすポーズや転がり回る行動が伴う場合はほぼ発情と判断できます。発情期の詳しいサインは猫の発情期サインと対処法でも解説しています。
避妊・去勢済みの成猫のアオーン(ストレス・環境変化)
引っ越し・リフォーム・新しいペットの導入後に突然アオーンと鳴き始めた場合は、縄張りへの不安やストレスが主因です。猫のストレスサインと対処法のページも合わせて確認してください。
高齢猫のアオーン(10歳以降・特に深夜)
要注意パターンです。認知機能低下症(CDS)や甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病が原因である可能性が高まります。若い頃にはしなかったアオーン声が10歳以降に新たに始まった場合は、動物病院で血液検査を受けることをお勧めします。声のトーンがいつもと違う・目がうつろ・方向感覚がない様子が伴う場合は特に早めに受診してください。
子猫の夜鳴きはなぜ起こる?お迎え初期の対処法

お迎え直後の子猫が夜鳴きするのは、きょうだいや母猫から離れた寂しさが主な原因です。これは病気ではなく自然な反応で、多くの場合3〜7日以内に落ち着きます。
子猫の夜鳴きに効果的な対処法
- ブリーダーから受け取った毛布やタオルをケージに入れる — 母猫・きょうだいの匂いが安心材料になります
- ケージを寝室に置く — 飼い主の呼吸音・体温を感じると落ち着く子が多いです
- フェロモン剤(フェリウェイ等)を使用する — 猫の安心フェロモンを模した製品で、環境変化のストレスを和らげます
- ぬるいお湯を入れたペットボトルをタオルで包んでケージに入れる — 母猫の体温を擬似的に再現する方法です
子猫が使っていたタオルやベッドなど、同じ匂いのついたものを寝床に置いてあげると、初日から数日の夜鳴きが軽くなることがあります。初日の具体的な過ごし方は子猫お迎え初日ガイドもあわせてご覧ください。
「子猫の夜鳴きは無視してもいいのか」について
短時間の待ちは有効ですが、完全な放置は逆効果になることがあります。鳴くたびにすぐ抱き上げると「鳴けば来てくれる」と学習しますが、一切応答しないと不安が強化されて夜鳴きが悪化する子もいます。「2〜3分待ち、鳴き止んだタイミングで低い穏やかな声をかける」という対応が現実的です。
成猫の夜鳴き — 発情・ストレス・病気の見分け方

成猫(1〜7歳前後)の夜鳴きは、発情・ストレス・運動不足の3軸で確認するのが基本です。
発情期による夜鳴き
避妊・去勢手術をしていない猫は、発情期に非常に大きな声で繰り返し鳴きます。オス猫では、去勢手術でけんか・徘徊・スプレーといった行動が減ることが、研究で報告されています(Hart & Barrett, 1973, JAVMA)。
| 性別 | 発情の特徴 | 周期 |
|---|---|---|
| メス | 大きな声でうなるような鳴き声、腰を低くするポーズ | 春・秋が多い、約2〜3週間間隔 |
| オス | 窓の外に向かって大声で鳴く、スプレー行動 | メスの発情に反応して通年 |
手術後も夜鳴きが続く場合
「去勢・避妊したのにまだ鳴いている」という場合、多くは習慣化した鳴き行動が時間をかけて消えていく過程です。しかし数ヶ月経っても続く場合は、稀ではありますが卵巣遺残症候群(手術時に卵巣組織が一部残存)や副腎からのホルモン分泌が関与しているケースがあります。獣医師に相談することをお勧めします。
運動不足・遊び不足による夜鳴き(見落とされがちな原因)
成猫の夜鳴きで見落とされやすいのが「運動エネルギーのはけ口不足」です。多くの記事が「日中に遊ばせましょう」と1〜2行で終わらせますが、実際に効果的なのは就寝1〜2時間前に集中して遊ばせることです。
猫は本来「狩り→食事→グルーミング→睡眠」のサイクルで生活しています。このサイクルを意図的に作ることで、自然な眠気を誘発できます。
就寝ルーティンの具体的な手順:
- 就寝1〜2時間前:釣り竿型おもちゃ(猫じゃらし)等で10〜15分の「狩猟模倣遊び」。獲物が逃げるように動かし、猫が全力で追いかけられる動きを意識します
- 遊びの後:夕食を与える(「狩りで獲物を仕留めた後に食べる」という流れを再現)
- 食後30分:グルーミングタイム(猫が自然に行います)
- 消灯:このタイミングでは眠気が高まっており、夜鳴きが出にくい状態になります
すぐに効果が出なくても、数日は同じ手順を続けてみてください。
7〜10歳の「シニア移行期」は特に注意が必要

7〜10歳は夜鳴きが新たに始まった場合に特に注意が必要な時期です。甲状腺機能亢進症・慢性腎臓病・高血圧が発症し始めるタイミングであり、単なる「年を取ったせい」と見過ごさないことが重要です。
他のサイトには書いていないポイントとして強調したいのが、この「7〜10歳の移行期」という概念です。多くの記事は「子猫・成猫・高齢猫(10歳以上)」の3分類で説明しますが、この移行期には夜鳴きが内臓疾患の初期サインとして現れ始める可能性があります。
日本での報告によると、甲状腺機能亢進症は8歳以上の猫で8.9%、10歳以上では10.7%に発症する可能性があるとされています(日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)の甲状腺機能亢進症解説による)。つまり10歳以上の猫では約10頭に1頭が甲状腺の問題を抱えている計算です。甲状腺機能亢進症は食欲増加・体重減少・多動といった症状を伴い、夜中に活発に動き回ってアオーンと鳴く行動が現れやすいです。
7歳を過ぎたら、かかりつけの動物病院で血液検査を受ける頻度を上げることを相談してみてください。甲状腺ホルモン(T4)や腎機能の数値を定期的に確認しておくと、夜鳴きが始まる前の段階で異変に気づける可能性があります。「夜鳴きのない今のうちに」検査を受けておくことが、将来の安心につながります。
高齢猫の夜鳴き — CDSと甲状腺機能亢進症を見逃さないために

高齢猫(10歳以上)の夜鳴きは、認知機能低下症(CDS)が主な原因の一つです。若い頃には夜鳴きしなかった猫が突然、夜中に大きな声で鳴き続けるようになった場合は早めに受診することをお勧めします。
高齢猫の認知機能の低下は、想像以上に多い
「高齢猫には認知症があります」と名前だけ挙げる記事が多いのですが、実際の数字を見ると、決して少なくありません。
McGrath ら(2024年、Animals誌)のレビューは、過去の調査を次のように紹介しています。
- 11〜14歳の猫(全身の病気がない猫):28%(約4頭に1頭以上)が、認知機能の低下による行動の変化を少なくとも1つ示した
- 15歳以上の猫:50%(2頭に1頭)が、同じく少なくとも1つ示した
日本の動物病院の解説でも、11歳以上の猫の28%、15歳以上の50%にCDS(認知機能低下症)に当てはまる兆候が見られるとされています(DVMsどうぶつ医療センター横浜のCDS解説)。10歳以上で夜鳴きが始まった場合、CDSという視点を持って動物病院に相談することをお勧めします。
高齢猫の夜鳴きに多い原因一覧
| 原因 | 特徴 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| 認知機能低下症(CDS) | 夜中に方向を失う・ぼんやりしている・ルーティンが崩れる | 動物病院での診断、環境の単純化、夜間ライト |
| 甲状腺機能亢進症 | 食欲増加・体重減少を伴う、多動 | 血液検査でT4値確認・投薬治療 |
| 高血圧 | 視力の変化・眼の異常を伴うことがある | 血圧測定・投薬治療 |
| 慢性腎臓病 | 多飲多尿・食欲不振・体重減少 | 定期的な血液・尿検査 |
| 聴力・視力の低下 | 暗闇・静寂への不安から鳴く | 夜間ナイトライト設置、声かけ |
高齢猫への環境対応
- 夜間もうっすら明かりを残す(真っ暗は不安を高める)
- トイレや水の場所を増やし、近くに置く(移動距離を短縮)
- 毎日同じ時間に食事・遊びのルーティンを作る
- 夜鳴きが2週間以上続く場合は必ず動物病院で検査を受ける
Flowens Catからお迎えいただいた猫が高齢になってから夜鳴きが始まった場合も、ぜひご相談ください。健康管理ページで定期検診の目安もご確認いただけます。
品種で夜鳴きの多さは変わる?

夜鳴きの多さは、品種より、一頭一頭の性格や年齢、体調で大きく変わると考えられます。
温和でおとなしいことで知られる猫でも、発情期や高齢期には、低く長い「アオーン」という声を出すことがあります。普段おとなしい子が高齢期に突然鳴き始めた場合は、病気のサインとして受け取ってください。品種団体の品種紹介にある声の記述は、猫の鳴き声の意味の記事にまとめました。品種ごとの詳細は品種一覧をご覧ください。
動物病院に行くべきサインはどれ?判断チェックリスト
以下の症状が一つでもある場合は早めに動物病院を受診してください。
- 夜鳴きが突然始まった(以前はしなかった)
- 声のトーンや鳴き方が普段と明らかに違う
- 食欲不振・体重減少・多飲多尿を伴っている
- トイレに何度も行くが尿が出ない・少量しか出ない
- ぐったりしている・よろける・ぶつかる
- 10歳以上で夜鳴きが新たに始まった
- 夜中に方向を失ったり、同じ場所をぐるぐる回っている
特にトイレに行くのに尿が出ない状態(尿閉)はオス猫の緊急事態です。12時間以内に受診してください。子猫の健康チェックポイントでは日常観察の基本も解説しています。
夜鳴きへの「やってはいけない」NG行動
NG 1:鳴くたびにすぐ応答する
「鳴けば来てくれる」と学習させてしまいます。少し待ってから、鳴き止んだタイミングで声をかけるか対応するようにしましょう。
NG 2:大きな声で怒鳴る・叱る
猫は叱られても「夜鳴きをやめなければ」とは学習しません。むしろ飼い主の感情的な反応が刺激となり、夜鳴きが増すことがあります。
NG 3:消灯した暗い部屋に一人で閉じ込める
特に高齢猫や子猫は、暗さ・孤独感から夜鳴きが悪化します。薄明かりを残す・ケージを寝室に置くなどの工夫を先に試してください。
NG 4:原因を特定しないまま対症療法だけ続ける
「鳴き止むなら」とフェロモン剤やサプリメントだけに頼り、原因疾患を見落とすケースがあります。2週間改善しない場合や、高齢猫の場合は、まず原因を確かめることが先決です。
原因別のおすすめグッズ・補助ツール
コマーシャル意図(グッズ・サービスを探している方向け)に、原因別の選択肢をまとめます。
| 原因 | おすすめの補助ツール | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| ストレス・環境変化 | フェリウェイ(合成フェロモン拡散器) | 不安行動・夜鳴きの軽減 |
| 運動不足 | 釣り竿型おもちゃ(長めのタイプ) | 就寝前の運動量確保 |
| 空腹による早朝鳴き | オートフィーダー(タイマー設定で深夜に少量のごはん) | 空腹起因の早朝覚醒を防止 |
| 不安・軽度のCDS | L-テアニン配合のリラックス系サプリメント | 精神的な安定を補助 |
| 視力・聴力低下 | ナイトライト(薄明かりを残すLED) | 暗闇への不安を軽減 |
よくある質問
Q. 猫の夜鳴きはいつまで続きますか?
原因によって異なります。お迎え直後の子猫は3〜7日、発情期の場合は2〜3週間が目安です。ただし病気や認知症が原因の場合は治療なしには改善しません。2週間以上続く場合や急に始まった場合は、動物病院への相談をお勧めします。
Q. 夜鳴きしている猫を無視(ほっとく)してもいいですか?
子猫・成猫のストレス由来の夜鳴きであれば、鳴くたびに即応答しない「待つ対応」は有効です。ただし完全な放置ではなく、鳴き止んだタイミングで声をかけることで「鳴かなければ構ってもらえる」という学習を促します。高齢猫の場合は「完全に無視」は禁物で、病気のサインを見逃すリスクがあります。
Q. 去勢・避妊手術で夜鳴きは止まりますか?
発情期が原因の夜鳴きは、手術後に落ち着くことが多いとされています。手術の時期は、動物病院と相談して決めてください。ただし手術後も習慣化した鳴き癖が残る場合は、数週間かけて落ち着くのを待ちましょう。数ヶ月経っても続く場合は、卵巣遺残症候群など稀な原因を除外するために獣医師に相談してください。
Q. 夜鳴きする猫に声をかけてもいいですか?
低い穏やかな声で一声かけるのは問題ありません。特に高齢猫は声かけで安心することがあります。ただし鳴くたびに長時間構うのは逆効果です。「鳴き止んだ後に声をかける」という順序を守ることがポイントです。
Q. 夜鳴きに効く市販のグッズはありますか?
フェロモン剤(フェリウェイ・コンフォートゾーン等)はストレス由来の夜鳴きに有効なことがあります。L-テアニン配合のサプリメントも選択肢の一つです。運動不足が原因の場合は、就寝前の集中遊び(釣り竿型おもちゃで10〜15分)が最もコストパフォーマンスの高い対処法です。病的な原因が隠れている場合はグッズだけでは改善しません。
Q. 高齢猫の夜鳴きは治りますか?
原因によって異なります。甲状腺機能亢進症・高血圧・慢性腎臓病が原因の場合は、適切な治療で夜鳴きが大幅に改善することがあります。CDS(認知機能低下症)が原因の場合は完治は難しいですが、環境整備(夜間ライト・トイレの近接化・ルーティンの固定)で頻度を減らせるケースがあります。10歳以上で新たに夜鳴きが始まった場合は、まず血液検査で原因疾患を除外することが最優先です。AAFP高齢猫ケアガイドライン(2021年)でも定期検診の重要性が強調されています。
まとめ:年齢別に原因を特定して、無理なく対処する
猫の夜鳴きは「どの年齢か」「いつから始まったか」「他に症状があるか」の3点を整理するだけで、原因の見当がつきやすくなります。
- 子猫:環境変化の寂しさが主因 → 匂い・体温・フェロモン剤で安心感を補う
- 成猫:発情・ストレス・運動不足の順で確認 → 就寝前の狩猟模倣ルーティンで改善するケースも多い
- 7〜10歳移行期:甲状腺・腎臓の異変が夜鳴きとして現れ始める年齢 → 定期検診で先手を打つ
- 高齢猫(10歳以上):CDS・内分泌疾患・感覚低下 → 必ず動物病院で血液検査を
「ただうるさい」で済まさず、愛猫からのサインとして受け取ってあげてください。Flowens Catでは、お迎え後の夜鳴きに関するご相談も承っています。お迎えの流れやよくある疑問はよくある質問からご確認いただけます。
*参考文献:McGrath AP, Horschler DJ, Hancock L (2024). "Feline Cognition and the Role of Nutrition: An Evolutionary Perspective and Historical Review." Animals 14(13):1967. doi:10.3390/ani14131967 / American Association of Feline Practitioners (AAFP). Senior Care Guidelines 2021. catvets.com / 日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)猫の甲状腺機能亢進症解説 jbvp.org / Hart BL, Barrett RE (1973). "Effects of castration on fighting, roaming, and urine spraying in adult male cats." JAVMA*
※ 記事内の画像はイメージです。実際にお迎えいただける子猫の写真は子猫一覧でご覧いただけます。








