> 獣医師への受診を優先してください。 本記事は情報提供を目的としており、医療アドバイスではありません。「水をあまり飲まない」「食欲が落ちた」「痩せてきた」など気になる症状がある場合は、必ず動物病院を受診してください。腎臓病は早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
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TL;DR(この記事のまとめ)
- 猫の慢性腎臓病(CKD)はシニア猫に最多の疾患。15歳以上では約50%が罹患するとされる
- IRISのステージ1〜4分類で進行度を把握し、ステージごとに治療・食事が変わる
- 初期症状は「多飲多尿」「体重減少」「食欲低下」——気づいたら即受診
- リンを抑えた腎臓サポート食への切り替えが治療の柱
- 長毛種(ペルシャ・ノルウェージャンフォレストキャット)は遺伝的リスクに注意
- Flowens Catでは出荷前の健康診断で腎機能マーカー(SDMA)を確認している
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猫の腎臓病(CKD)とはどんな病気?
猫の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease、以下CKD)は、腎臓の機能が数か月〜数年をかけて徐々に低下していく不可逆的な疾患です。腎臓は体内の老廃物をろ過し、水分・電解質バランスを調整する臓器ですが、一度ダメージを受けた腎細胞は再生しません。
発症率の実態(参考データ)
- 7歳以上の猫で推定30〜35%が何らかの腎機能低下を抱えるとされる(IRIS 2023年ガイドライン)
- 15歳以上では約50%が罹患するという報告がある(Elliot & Barber, Journal of Veterinary Internal Medicine)
- 猫の死因の第1位または第2位を毎年争う疾患
腎臓病は急性(AKI)と慢性(CKD)に分かれますが、本記事では発症頻度の高い慢性腎臓病(CKD)を中心に解説します。
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猫のCKDを疑うべき症状は?
腎臓病の厄介な点は、腎機能が75%以上失われるまで症状が出にくいことです。「なんとなく元気がない」という段階でもう中〜後期であることも珍しくありません。
初期〜中期に現れやすい症状
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 多飲多尿 | 水をよく飲み、尿量が増える。腎臓の濃縮機能が落ちているサイン |
| 体重減少 | 数か月かけてじわじわ痩せてくる(猫が痩せてきた原因と対策も参照) |
| 食欲低下 | 尿毒素の蓄積で気分が悪くなり食欲が落ちる(猫が食欲ない時に確認することも参照) |
| 毛並みの悪化 | グルーミングを嫌がり、毛がパサつく・毛玉が増える |
| 口臭(アンモニア臭) | 尿素が口腔内で分解されるため |
中期〜後期に現れやすい症状
- 嘔吐・下痢(週に複数回)
- 口内炎・潰瘍(尿毒症性口内炎)
- 高血圧による視力障害(突然目が見えなくなるケースも)
- 貧血(腎臓が造血ホルモン・エリスロポエチンを産生できなくなる)
- ぐったり・起き上がれない
水を飲まない・飲む量が変わったと感じたら、腎臓病の初期サインとして必ず獣医師に相談してください。
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IRISステージ分類|猫のCKDの進行度早見表
国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)が定めた世界標準の分類です。血中クレアチニン値とSDMA値で判定します。
| ステージ | クレアチニン(mg/dL) | SDMA(µg/dL) | 状態 | 生存中央値 |
|---|---|---|---|---|
| Stage 1 | <1.6 | <18 | 腎機能の低下はあるが代償できている | 3年以上も可 |
| Stage 2 | 1.6〜2.8 | 18〜35 | 軽〜中等度の機能低下。症状は軽微 | 中央値 約2〜3年 |
| Stage 3 | 2.9〜5.0 | 36〜54 | 明らかな尿毒症症状が出始める | 中央値 約1〜2年 |
| Stage 4 | >5.0 | >54 | 重度腎不全。緊急対応が必要 | 数か月単位 |
Stage 1 での発見が最大の目標です。 Stage 2 以降で診断される猫が圧倒的に多い現状を変えるには、年1回以上の血液検査が不可欠です。
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猫のCKDはなぜ起こる?主な原因
腎臓病の原因は単一でなく、複数が重なって発症します。
加齢性の組織変性
最大の要因。腎細胞は年齢とともに自然に減少します。猫は7歳から「シニア期」に入るため、定期検査の開始目安とされています。
慢性的な脱水
猫は本来砂漠系の動物で、飲水量が少ない傾向があります。ドライフードのみの食事が続くと慢性的な脱水状態になり、腎臓への負担が蓄積します。
歯周病・慢性感染症
口腔内の細菌が血流に乗り、腎臓に繰り返し炎症を起こすことが知られています。定期的な歯磨き(猫の歯磨き)が腎臓病予防にもつながります。
遺伝的素因(長毛種に注意)
ペルシャ・エキゾチックショートヘアでは多発性嚢胞腎(PKD)という遺伝疾患が腎臓病の引き金になる場合があります。PKDは遺伝子検査で陰性を確認できます。ノルウェージャンフォレストキャット・シベリアンなどの長毛種全般でも腎機能の遺伝的な個体差が報告されており、注意が必要です。
そのほかの原因
- 高血圧(二次性CKDの一因)
- 特発性糸球体腎炎
- 尿管閉塞・尿石症の繰り返し
- 腎毒性のある薬物・中毒(ユリ科植物など)
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CKDの治療法|ステージ別の基本方針
腎臓病に「根治」はありませんが、進行を遅らせ、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を維持する治療が中心です。
輸液療法(皮下点滴・静脈点滴)
脱水補正と尿毒素の希釈が目的。Stage 2以上では自宅での皮下点滴を指導されるケースがあります。腎臓病の治療でもっとも基本的なケアです。
降圧薬・リン吸着薬
高血圧(収縮期160mmHg以上)を伴うCKDにはアムロジピン等の降圧薬を使用。リン吸着薬は食事からのリン吸収を抑え、腎臓への負担を軽減します。
造血ホルモン補充
Stage 3〜4で貧血が進んだ場合、エリスロポエチン製剤やダルベポエチンが使用されます。
ACE阻害薬・ARB
タンパク尿が顕著な場合、腎保護目的で処方されることがあります。
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猫のCKD食事療法|腎臓サポート食の選び方
食事管理はCKD治療の中核です。リン・タンパク質・ナトリウムの制限と水分摂取量の増加が基本方針です。
制限すべき栄養素
| 栄養素 | 理由 | 対処 |
|---|---|---|
| リン | 腎機能低下時に蓄積し、腎臓をさらに傷つける | 腎臓サポート食に切り替え+必要に応じてリン吸着薬 |
| タンパク質 | 過剰なタンパク質は尿毒素(BUN)の材料になる | 量より質(高消化性タンパク)で制限 |
| ナトリウム | 高血圧を悪化させる | 高塩分おやつ・人間の食べ物は厳禁 |
水分摂取を増やす工夫
- ウェットフードへの切り替えまたは混合給餌
- 流れる水を好む猫には循環式給水器
- フードに少量のぬるま湯を加える
腎臓サポート食の種類
Royal Canin・Hill's・Purineaなどの処方食ブランドが腎臓病用フードを出しています。必ず獣医師の指示のもとで切り替えることが重要です(ステージによって適切な処方食が異なります)。
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猫のCKD予防|ブリーダーが実践している早期発見アプローチ
定期血液検査の重要性
7歳からは年1回、10歳以上は年2回の血液検査が推奨されます(WSAVA 2022年ガイドライン)。特にSDMA検査はクレアチニンより25〜40%早く腎機能低下を検出できるとされており、Stage 1での発見が可能です。
日常でできる予防ケア
- 水分摂取の促進 — ウェットフード活用・給水器の工夫(詳しくは猫が水を飲まない原因と対策)
- 歯周病の予防 — 週2〜3回の歯磨きが慢性感染による腎臓へのダメージを減らす
- 肥満防止 — 適正体重の維持が全身の臓器負担を軽減
- ユリ科植物を遠ざける — 猫には非常に高い腎毒性あり。切り花も室内に置かない
Flowens Catの健康診断体制
当キャッテリーでは、子猫をお迎えいただく前に獣医師による総合健康診断を実施しています。血液検査項目にはSDMAを含む腎機能マーカーが含まれており、遺伝性疾患(PKD遺伝子検査など)のスクリーニングも行っています。特にペルシャ・エキゾチックショートヘアは全頭PKD陰性を確認済みです。
健康な子猫から始めることが、将来の腎臓病リスク低減につながります。お迎えを検討中の方は子猫一覧または健康管理の取り組みをご覧ください。
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FAQ|猫の腎臓病でよく聞かれる質問
Q1. 猫の腎臓病はどのくらいで進行しますか?
進行速度は個体差が大きく、数か月で急速に悪化するケースもあれば、Stage 2の状態で3〜5年安定するケースもあります。定期検査でステージの変化を追いながら、治療方針を獣医師と都度見直すことが重要です。
Q2. 腎臓病の猫に絶対与えてはいけない食べ物は?
リンを多く含む乳製品・魚の骨・内臓類(レバーなど)は控えてください。また、ユリ科植物(ユリ・チューリップ・スズランなど)は少量でも急性腎不全を引き起こすため、猫が触れない環境づくりが必須です。
Q3. 腎臓病の猫がぐったりしています。今すぐ病院に行くべきですか?
はい、すぐに受診してください。急激な元気消失は尿毒症クリーゼや急性増悪のサインである可能性があります。夜間・休日であっても救急動物病院への連絡をためらわないでください。
Q4. 腎臓病と診断されたら、もう長生きできませんか?
Stage 1〜2での発見であれば、適切な治療と食事管理でQOLを保ちながら数年単位で安定した生活を送ることは十分可能です。早期発見・適切なケアが最大の武器です。
Q5. 長毛種は腎臓病になりやすいですか?
ペルシャ・エキゾチックショートヘアはPKD(多発性嚢胞腎)という遺伝性疾患との関連から腎臓病リスクが高いとされています。それ以外の長毛種(ノルウェージャンフォレストキャット・ラグドール・サイベリアンなど)でも遺伝的な腎機能の個体差があると報告されており、早期からの定期検査が推奨されます。
Q6. 子猫のうちから腎臓病を予防するために何ができますか?
PKD陰性の血統を選ぶ・ウェットフードや水分補給を習慣化する・定期健診を怠らない、の3点が有効です。また、信頼できるブリーダーから健康診断済みの子猫をお迎えすることが、健康な出発点として重要です。
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まとめ|猫の腎臓病は「早期発見」がすべて
猫の慢性腎臓病(CKD)は発症すれば根治できない疾患ですが、IRISステージ1〜2の段階で発見できれば、治療と食事管理でQOLを長く保つことが可能です。
多飲多尿・体重減少・食欲低下は腎臓病の三大初期サイン。気になる変化に気づいたら、迷わず動物病院へ。7歳を過ぎたら年1回の血液検査(SDMA含む)を習慣にしましょう。
Flowens Catでは、お迎え前の健康診断・遺伝子検査を通じて、健康な子猫をお届けすることを最優先にしています。品種ごとの健康リスクや当キャッテリーの取り組みについては健康管理の取り組みをご覧ください。現在ご縁を探している子猫は子猫一覧からご確認いただけます。
いつまでも愛猫と健やかに過ごすために、今日から「検査の習慣」を始めてみてください。


