FLOWENS CAT
健康管理2026-04-24 · 更新 2026-09-07

【2026年版】猫の腎臓病 完全ガイド|症状・重症度の分類・食事療法・早期発見

猫の腎臓病はシニア猫に最多の疾患で、10歳以上で最大40%、15歳以上で80%が罹患するとされます。重症度の分類(1〜4段階)・症状・食事療法・治療法・Flowens Catが実践する早期発見の取り組みを獣医学的根拠とともに解説します。

【2026年版】猫の腎臓病 完全ガイド|症状・重症度の分類・食事療法・早期発見
目次ひらく(全10章)
  1. 01猫の腎臓病(CKD)とはどんな病気?
  2. 02猫のCKDを疑うべき症状は?
  3. 03IRISステージ分類|猫のCKDの進行度早見表
  4. 04猫のCKDはなぜ起こる?主な原因
  5. 05CKDの治療法|ステージ別の基本方針
  6. 06猫のCKD食事療法|腎臓サポート食の選び方
  7. 07猫のCKD予防|ブリーダーが実践している早期発見アプローチ
  8. 08よくある質問|猫の腎臓病
  9. 09まとめ|猫の腎臓病は「早期発見」がすべて
  10. 10出典

獣医師への受診を優先してください。 本記事は情報提供を目的としており、医療アドバイスではありません。「水をあまり飲まない」「食欲が落ちた」「痩せてきた」など気になる症状がある場合は、必ず動物病院を受診してください。腎臓病は早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。

この記事の要点

  • 猫の慢性腎臓病(CKD)はシニア猫に最多の疾患。Cornell Feline Health Centerによれば10歳以上で最大40%、15歳以上で80%が罹患(りかん)するとされる
  • IRISのステージ1〜4分類で進行度を把握し、ステージごとに治療・食事が変わる
  • 初期症状は「多飲多尿」「体重減少」「食欲低下」——気づいたら即受診
  • リンを抑えた腎臓サポート食への切り替えが治療の柱
  • 長毛種(ペルシャ・ノルウェージャンフォレストキャット)は遺伝的リスクに注意
  • Flowens Catの健康診断(獣医師による視診・触診・聴診)に血液検査は含まないため、腎機能のSDMA検査は動物病院で受ける

猫の腎臓病(CKD)とはどんな病気?

健康な腎臓とCKD(慢性腎臓病)の腎臓の違いを示す断面イラスト

猫の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease、以下CKD)は、腎臓の機能が数か月〜数年をかけて徐々に低下していく不可逆的な疾患です。腎臓は体内の老廃物をろ過し、水分・電解質バランスを調整する臓器ですが、一度ダメージを受けた腎細胞は再生しません。

発症率の実態(参考データ)

  • 10歳以上の猫で最大40%、15歳以上では80%が罹患するとされる(Cornell Feline Health Center)
  • 無作為抽出した猫を対象にした調査では、全年齢を通じて50%にCKDの所見がみられたとの報告もある(Marino CL et al., *Journal of Feline Medicine and Surgery*, 2014)
  • 英国の一次診療データ(118,016頭中4,009頭を詳細調査)では、死因の内訳は外傷12.2%・腎疾患12.1%・非特異的疾患11.2%・腫瘍10.8%で、腎疾患は猫の死因の上位を占める(O'Neill DG et al., *Journal of Feline Medicine and Surgery*, 2015)

腎臓病は急性(AKI)と慢性(CKD)に分かれますが、本記事では発症頻度の高い慢性腎臓病(CKD)を中心に解説します。


猫のCKDを疑うべき症状は?

多飲多尿は猫の腎機能低下の第一サイン|水を多く飲み始めたら要観察

腎臓病の厄介な点は、血中クレアチニン値は腎機能の約75%が失われるまで上昇しないため、症状が出にくいことです(Cornell Feline Health Center)。「なんとなく元気がない」という段階でもう中〜後期であることも珍しくありません。

初期〜中期に現れやすい症状

症状説明
多飲多尿水をよく飲み、尿量が増える。腎臓の濃縮機能が落ちているサイン
体重減少数か月かけてじわじわ痩せてくる(猫が痩せてきた原因と対策も参照)
食欲低下尿毒素の蓄積で気分が悪くなり食欲が落ちる(猫が食欲ない時に確認することも参照)
毛並みの悪化グルーミングを嫌がり、毛がパサつく・毛玉が増える
口臭(アンモニア臭)尿素が口腔内で分解されるため

中期〜後期に現れやすい症状

  • 嘔吐・下痢(週に複数回)
  • 口内炎・潰瘍(尿毒症性口内炎)
  • 高血圧による視力障害(突然目が見えなくなるケースも)
  • 貧血(腎臓が造血ホルモン・エリスロポエチンを産生できなくなる)
  • ぐったり・起き上がれない

水を飲まない・飲む量が変わったと感じたら、腎臓病の初期サインとして必ず獣医師に相談してください。


IRISステージ分類|猫のCKDの進行度早見表

猫のCKDの進行度を示すIRISステージ1〜4の分類

国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)が定めた世界標準の分類です。血中クレアチニン値とSDMA値で判定します。

ステージクレアチニン(mg/dL)SDMA(µg/dL)状態生存期間の目安
Stage 1<1.6<18腎機能の低下はあるが代償できている個体差が大きく確立した中央値はない
Stage 21.6〜2.818〜25軽〜中等度の機能低下。症状は軽微中央値 約3.2年(1,151日)
Stage 32.9〜5.026〜38明らかな尿毒症症状が出始める中央値 約2.1年(778日)
Stage 4>5.0>38重度腎不全(じんふぜん)。緊急対応が必要中央値 約3.4か月(103日)
※クレアチニン値・SDMA基準値は国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)「IRIS Staging of CKD」の猫の基準に基づきます。SDMAは犬と猫で基準値が異なり、猫の方が低い値で異常と判定されます(本表は猫の基準値です)。クレアチニン値は筋肉量・水分状態・食事に影響されるため、SDMA(筋肉量に左右されにくい)との併用が推奨されています。生存期間はStage 2b〜4の猫211頭を対象にした後ろ向き研究(Boyd LM et al., *Journal of Veterinary Internal Medicine*, 2008)による診断時ステージ別の生存期間中央値です。同研究の対象は中等度以上の腎機能低下がある猫のみのため、Stage 1については確立した中央値データはありません。個体差が大きく、適切な管理で数年単位の安定が得られるケースも多くあります。

Stage 1 での発見が最大の目標です。 Stage 2 以降で診断される猫が圧倒的に多い現状を変えるには、年1回以上の血液検査が不可欠です。


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猫のCKDはなぜ起こる?主な原因

腎臓病の原因は単一でなく、複数が重なって発症します。

加齢性の組織変性

最大の要因。腎細胞は年齢とともに自然に減少します。猫は7歳から「シニア期」に入るため、定期検査の開始目安とされています。

慢性的な脱水

猫は本来砂漠系の動物で、飲水量が少ない傾向があります。ドライフードのみの食事が続くと慢性的な脱水状態になり、腎臓への負担が蓄積します。

歯周病(ししゅうびょう)・慢性感染症

口腔内の細菌が血流に乗り、腎臓に繰り返し炎症を起こすことが知られています。定期的な歯磨き猫の歯磨き)が腎臓病予防にもつながります。

遺伝的素因(長毛種に注意)

ペルシャ・エキゾチックショートヘア・ヒマラヤン・ブリティッシュショートヘアでは多発性嚢胞腎(PKD)という遺伝疾患が腎臓病の引き金になる場合があります(Cornell Feline Health Center)。PKDは遺伝子検査で陰性を確認できます。なお、バーマンは健康な個体でも他品種よりクレアチニン・SDMAの数値が高くなる傾向が報告されており(バーマンの最大20%が検査室の基準範囲外になるとされる)、これは腎臓病ではなく品種特有の検査値の傾向として知られています(IRIS「Breed and size associated effects on serum creatinine and SDMA」)。ノルウェージャンフォレストキャットやシベリアンについて、腎機能に品種特有の個体差があるとする公表データは私たちが調べた範囲では見当たりませんでした。

そのほかの原因

  • 高血圧(二次性CKDの一因)
  • 特発性糸球体腎炎
  • 尿管閉塞・尿石症の繰り返し
  • 腎毒性のある薬物・中毒(ユリ科植物など)

CKDの治療法|ステージ別の基本方針

CKD治療の基本となる皮下点滴(輸液療法)を受ける猫

腎臓病に「根治」はありませんが、進行を遅らせ、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を維持する治療が中心です。

輸液療法(皮下点滴・静脈点滴)

脱水補正と尿毒素の希釈が目的。Stage 2以上では自宅での皮下点滴を指導されるケースがあります。腎臓病の治療でもっとも基本的なケアです。

降圧薬・リン吸着薬

高血圧(収縮期160mmHg以上、IRISの「Hypertensive」区分)を伴うCKDにはアムロジピン等の降圧薬を使用。リン吸着薬は食事からのリン吸収を抑え、腎臓への負担を軽減します。

造血ホルモン補充

Stage 3〜4で貧血が進んだ場合、エリスロポエチン製剤やダルベポエチンが使用されます。

ACE阻害薬・ARB

タンパク尿が顕著な場合、腎保護目的で処方されることがあります。


猫のCKD食事療法|腎臓サポート食の選び方

猫の腎臓サポート食|低リン処方食と水分摂取を増やす工夫

食事管理はCKD治療の中核です。リン・タンパク質・ナトリウムの制限水分摂取量の増加が基本方針です。

制限すべき栄養素

栄養素理由対処
リン腎機能低下時に蓄積し、腎臓をさらに傷つける腎臓サポート食に切り替え+必要に応じてリン吸着薬
タンパク質過剰なタンパク質は尿毒素(BUN)の材料になる量より質(高消化性タンパク)で制限
ナトリウム高血圧を悪化させる高塩分おやつ・人間の食べ物は厳禁

水分摂取を増やす工夫

  • ウェットフードへの切り替えまたはドライとの併用
  • 流れる水を好む猫には循環式給水器
  • フードに少量のぬるま湯を加える

腎臓サポート食の種類

Royal Canin・Hill's・Purineaなどの処方食ブランドが腎臓病用フードを出しています。必ず獣医師の指示のもとで切り替えることが重要です(ステージによって適切な処方食が異なります)。


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猫のCKD予防|ブリーダーが実践している早期発見アプローチ

7歳から年1回の血液検査(SDMA)で猫の腎臓病を早期発見

定期血液検査の重要性

7〜10歳(成熟期)は1〜2年に1回、10歳以上(シニア期)は少なくとも年1回、可能であれば半年に1回の血液検査が推奨されます(2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines)。特にSDMA検査は腎機能の約40%が失われた時点で異常値になるのに対し、クレアチニンは約75%が失われるまで上昇しないとされ(Cornell Feline Health Center)、より早期の発見が可能です。実際の観察研究では、SDMAがクレアチニンより平均17.0か月(範囲1.5〜48か月)早く上昇したとの報告もあります(Hall JA et al., *Journal of Veterinary Internal Medicine*, 2014)。

日常でできる予防ケア

  1. 水分摂取の促進 — ウェットフード活用・給水器の工夫(詳しくは猫が水を飲まない原因と対策
  2. 歯周病の予防 — 週2〜3回の歯磨きが慢性感染による腎臓へのダメージを減らす
  3. 肥満防止 — 適正体重の維持が全身の臓器負担を軽減
  4. ユリ科植物を遠ざける — 猫には非常に高い腎毒性あり。切り花も室内に置かない

Flowens Catの健康診断体制

当キャッテリーでは、子猫をお迎えいただく前に獣医師による健康診断(視診・触診・聴診)を実施し、獣医師が署名した健康診断書をお付けしています。また親猫の遺伝子検査(PKDなど)を全頭で行っているため、生まれた子猫の遺伝性疾患リスクを事前に把握できます。特にペルシャ・エキゾチックショートヘアは親猫のPKD遺伝子検査で全頭陰性を確認済みです。なお、SDMAなどの血液検査は当店の健康診断には含まれないため、腎機能の定期チェックはお迎え後に動物病院で受けてください。

健康な子猫から始めることが、将来の腎臓病リスク低減につながります。お迎えを検討中の方は子猫一覧または健康管理の取り組みをご覧ください。


よくある質問|猫の腎臓病

Q1. 猫の腎臓病はどのくらいで進行しますか?

進行速度は個体差が大きく、数か月で急速に悪化するケースもあれば、Stage 2の状態で3〜5年安定するケースもあります。定期検査でステージの変化を追いながら、治療方針を獣医師と都度見直すことが重要です。

Q2. 腎臓病の猫に絶対与えてはいけない食べ物は?

リンを多く含む乳製品・魚の骨・内臓類(レバーなど)は控えてください。また、ユリ科植物(ユリ・チューリップ・スズランなど)は少量でも急性腎不全を引き起こすため、猫が触れない環境づくりが必須です。

Q3. 腎臓病の猫がぐったりしています。今すぐ病院に行くべきですか?

はい、すぐに受診してください。急激な元気消失は尿毒症クリーゼや急性増悪のサインである可能性があります。夜間・休日であっても救急動物病院への連絡をためらわないでください。

Q4. 腎臓病と診断されたら、もう長生きできませんか?

Stage 1〜2での発見であれば、適切な治療と食事管理でQOLを保ちながら数年単位で安定した生活を送ることは十分可能です。早期発見・適切なケアが最大の武器です。

Q5. 長毛種は腎臓病になりやすいですか?

ペルシャ・エキゾチックショートヘア・ヒマラヤン・ブリティッシュショートヘアはPKD(多発性嚢胞腎)という遺伝性疾患との関連から腎臓病リスクが高いとされています(Cornell Feline Health Center)。それ以外の長毛種(ノルウェージャンフォレストキャット・ラグドール・サイベリアンなど)について、腎機能に品種特有の個体差があるとする公表データは私たちが調べた範囲では見当たりませんでしたが、品種を問わず早期からの定期検査は有効です。

Q6. 子猫のうちから腎臓病を予防するために何ができますか?

PKD陰性の血統を選ぶ・ウェットフードや水分補給を習慣化する・定期健診を怠らない、の3点が有効です。また、信頼できるブリーダーから健康診断済みの子猫をお迎えすることが、健康な出発点として重要です。


まとめ|猫の腎臓病は「早期発見」がすべて

猫の慢性腎臓病(CKD)は発症すれば根治できない疾患ですが、IRISステージ1〜2の段階で発見できれば、治療と食事管理でQOLを長く保つことが可能です。

多飲多尿・体重減少・食欲低下は腎臓病の三大初期サイン。気になる変化に気づいたら、迷わず動物病院へ。7歳を過ぎたら年1回の血液検査(SDMA含む)を習慣にしましょう。

Flowens Catでは、お迎え前の健康診断・遺伝子検査を通じて、健康な子猫をお届けすることを最優先にしています。品種ごとの健康リスクや当キャッテリーの取り組みについては健康管理の取り組みをご覧ください。現在ご縁を探している子猫は子猫一覧からご確認いただけます。

いつまでも愛猫と健やかに過ごすために、今日から「検査の習慣」を始めてみてください。


出典

  • Cornell Feline Health Center - Chronic Kidney Disease(発症率、クレアチニン75%・SDMA40%の閾値)
  • Cornell Feline Health Center - Polycystic Kidney Disease(PKDのリスク品種)
  • Marino CL, Lascelles BD, Vaden SL, et al. "Prevalence and classification of chronic kidney disease in cats randomly selected from four age groups and in cats recruited for degenerative joint disease studies." *Journal of Feline Medicine and Surgery*. 2014;16(6):465-472. PMID: 24217707
  • O'Neill DG, Church DB, McGreevy PD, et al. "Longevity and mortality of cats attending primary care veterinary practices in England." *Journal of Feline Medicine and Surgery*. 2015;17(2):125-133. PMID: 24925771
  • Boyd LM, Langston C, Thompson K, et al. "Survival in cats with naturally occurring chronic kidney disease (2000-2002)." *Journal of Veterinary Internal Medicine*. 2008;22(5):1111-1117. PMID: 18691369
  • Hall JA, Yerramilli M, Obare E, et al. "Comparison of serum concentrations of symmetric dimethylarginine and creatinine as kidney function biomarkers in cats with chronic kidney disease." *Journal of Veterinary Internal Medicine*. 2014;28(6):1676-1683. PMID: 25231385
  • Quimby J, Gowland S, Carney HC, et al. "2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines." *Journal of Feline Medicine and Surgery*. 2021;23(3):211-233. PMID: 33627003
  • IRIS (International Renal Interest Society) - IRIS Staging of CKD(クレアチニン・SDMA基準値、血圧サブステージ、品種別の検査値傾向)

※ 記事内の画像はイメージです。実際にお迎えいただける子猫の写真は子猫一覧でご覧いただけます。

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