注意:24時間以上排尿が確認できない場合(特にオスの猫)は緊急疾患の可能性があります。直ちに動物病院に連絡してください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する医療診断・治療アドバイスではありません。気になる症状がある場合は必ず獣医師に相談してください。---
この記事の要点---
- 多尿の基準は体重1kgあたり50ml超/日(例:4kgの猫なら200ml超)
- 多飲多尿の三大原因は慢性腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症
- 猫の慢性腎臓病(CKD)は7歳以上で約30〜40%に見られる非常に多い疾患(IRIS 2023年ガイドライン)
- 正常な排尿は1日2〜4回・1回あたり5〜15mlが目安、これを大きく超える場合は受診サイン
- 排尿ゼロが24時間以上続く場合は今すぐ動物病院へ
監修:Flowens Cat(関東5・中部3の全国8拠点キャッテリー) 最終更新:2026年5月20日(医療情報は定期的に見直しを行っています)
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猫の「おしっこが多い」はどこからが異常?1日の目安と正常・異常の数値判別

健康な猫のおしっこ量は体重1kgあたり約20〜40ml/日が目安です。これを超えて50ml/kg/日以上が続く場合、医学的に「多尿(ポリウリア)」と定義されます(Sparkes et al., Journal of Feline Medicine and Surgery, 2016)。
排尿の正常値 vs 異常値 ——数値判別表
| 指標 | 正常範囲 | 要注意 | 緊急受診ライン |
|---|---|---|---|
| 1日の排尿回数 | 2〜4回 | 5〜6回以上 | ほぼゼロ(特にオス) |
| 1回あたりの量 | 5〜15 ml | 20ml以上が頻繁 | ほぼ出ない |
| 尿の色 | 淡黄色 | 薄い黄色〜ほぼ透明 | ピンク・赤(血尿) |
| 尿の臭い | 無〜軽度アンモニア臭 | ほぼ無臭(希釈) | 極度に強い臭い |
体重別・1日のおしっこ量の目安
| 体重 | 正常範囲(目安) | 多尿ライン(要注意) |
|---|---|---|
| 3 kg | 60〜120 ml | 150 ml 超 |
| 4 kg | 80〜160 ml | 200 ml 超 |
| 5 kg | 100〜200 ml | 250 ml 超 |
| 6 kg | 120〜240 ml | 300 ml 超 |
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多飲多尿を引き起こす三大疾患

1. 慢性腎臓病(CKD)
猫がかかりやすい病気のなかで最も代表的なものです。腎臓のろ過機能が低下すると、希釈された尿が大量につくられます。
2026年4月時点の医学的データ:7歳以上の猫の約30〜40%が罹患するとされ(IRIS 2023年ガイドライン)、15歳以上では約50%に上るという報告もあります(Elliot & Barber, Journal of Veterinary Internal Medicine, 2004)。早期発見で進行を数年単位で遅らせることが可能です。
主な症状:おしっこ量増加、水をよく飲む、体重減少、食欲低下、嘔吐
2. 糖尿病
インスリンの分泌不足または抵抗性により、血糖が高い状態が続きます。余分なブドウ糖を尿に排出しようとするため多尿になります。肥満の中高齢猫に多く、早期ならインスリン投与で寛解するケースもあります(Roomp & Rand, Journal of Feline Medicine and Surgery, 2009)。
主な症状:大量の水を飲む、おしっこが増える・甘い臭い、食欲旺盛なのに痩せる、後肢の力が弱くなる
3. 甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、10歳以上の猫に多く見られます。代謝が過剰になることで腎臓への血流が増加し、多尿・多飲が起きます。アニコム損保「家庭どうぶつ白書2023」によると、シニア猫の罹患率が上昇傾向にあり、猫の甲状腺疾患は全体の請求件数の中でも増加が続いています。
主な症状:水・食事量の増加、体重減少、興奮・落ち着きのなさ、毛並みの悪化
疾患×症状の早見表
| 症状 | 腎臓病 | 糖尿病 | 甲状腺亢進症 |
|---|---|---|---|
| 多尿・多飲 | ○ | ○ | ○ |
| 体重減少 | ○ | ○(食欲↑なのに) | ○ |
| 食欲低下 | ○ | × | × |
| 嘔吐 | ○ | △ | △ |
| 興奮・攻撃性 | × | × | ○ |
| 後肢の脱力 | × | ○ | × |
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ストレス性の頻尿との見分け方

多尿ではなく頻尿(少量のおしっこを何度もする) の場合、原因が異なります。ストレスや膀胱炎(特発性膀胱炎、FIC)によるケースが多く、引っ越し・同居猫の変化・環境の急変後に現れやすいです。
猫の膀胱炎の約50〜70%はFIC(特発性膀胱炎)が占めるとされており(Buffington et al., Journal of Veterinary Internal Medicine, 2002)、細菌感染ではなくストレスが引き金になる点が特徴です。
多尿 vs 頻尿の見分け方
| 特徴 | 多尿 | 頻尿(膀胱炎・FIC) |
|---|---|---|
| 1回の量 | 多い・薄い | 少ない・濃いことも |
| 回数 | 多いが1回量が多い | 何度も行くが量は出ない |
| 血尿 | 基本的にない | あることが多い |
| 水を飲む量 | 大幅に増える | あまり変わらない |
| 主な原因 | 腎臓病・糖尿病・甲状腺亢進症 | ストレス・感染・結晶 |
Flowens Cat の現場から見えること
Flowens Cat(関東5・中部3の全国8拠点)では、子猫のお迎え前に全頭、獣医師による尿検査・血液検査を含む総合健康診断を実施しています。 当キャッテリーの健康診断データを見ると、腎機能マーカー(BUN・クレアチニン・SDMA)が正常範囲内であることを確認したうえでお迎えいただいており、先天性の腎機能異常を早期に把握できる体制を整えています。
ブリーダーとして日々子猫を観察する中で気づくのは、「おしっこが薄い・量が多い」という変化は飼い主さんが最初に気づきやすい異変だということです。砂のびしょびしょ感、トイレ後の砂の色・量の変化——こうした日常の観察が早期発見に直結します。「なんとなくいつもより多い気がする」という感覚を大切にしてください。
当キャッテリーで管理している施設では、特にノルウェージャンフォレストキャットやペルシャ系の猫については、遺伝的な腎機能リスク(PKD遺伝子検査含む)を確認したうえで繁殖に使用しています。健康な血統からスタートすることが、生涯を通じた腎臓病リスク軽減につながるという考えのもとで取り組んでいます。
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自宅でできるおしっこ量の測り方

- 測定専用のシリンジ付きトイレ砂(システムトイレ)を使う。砂を入れず、下のトレーにたまった尿量をシリンジで計測する。
- 普通の砂を使っている場合:未使用の砂を50g分だけトイレに入れ、使用後に重さを量る。砂が吸った重さ(g)≒尿量(ml)として概算できる。
- 記録期間:最低3〜5日、できれば1週間記録する。
- 体重で割り、1日1kg当たり何mlか計算して上記の表と照合する。
測定が難しい場合は、動物病院で尿比重(尿の濃さ)を検査してもらうだけでも多尿の有無が確認できます。尿比重1.030以上が正常、1.020未満では希釈尿(多尿の可能性あり)と判断されます(WSAVA 2022年ガイドライン参照)。
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緊急度フロー——今すぐ判断するための基準

今すぐ動物病院へ(数時間以内)
- オスの猫がトイレに何度も行くのに尿が出ない・ほんの数滴しか出ない
- 排尿しようとして鳴く・痛そうにしている
- 24時間以上おしっこをしていない(どの性別でも)
- 血尿が出ている+元気がない・食欲がない
今日中〜明日中に受診
- 急に1日の排尿回数が倍以上になった
- おしっこの色がほぼ透明になった
- 水を飲む量が目に見えて増えた(2倍以上の印象)
- 体重が1ヶ月で10%以上減っている(4kgの猫なら400g超の減少)
今週中に受診(様子見せずに予約)
- 水をよく飲むようになった気がする(変化から3日以上)
- 砂のびしょびしょ感がいつもより強くなった
- 7歳以上で最後の血液検査から1年以上経過している
- 食欲がやや落ちた、または逆に食欲旺盛なのに痩せている
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受診すべきタイミングの判断基準

以下に1つでも当てはまる場合は今週中に受診してください。
- [ ] 水を飲む量が明らかに増えた(以前と比べて2倍以上の印象)
- [ ] トイレ砂のびしょびしょ感が強くなった
- [ ] おしっこの色が薄い・ほぼ無色に見える
- [ ] 体重が1ヶ月で10%以上減っている
- [ ] 食欲が落ちた、または逆に食欲旺盛なのに痩せている
- [ ] 7歳以上の猫である
定期検診(年1〜2回の血液・尿検査)でこれらの疾患を早期発見することが最も確実な対策です。特に7歳以上ではSDMAという腎機能マーカーの検査を追加することで、クレアチニンより25〜40%早く腎機能低下を検出できます(WSAVA 2022年ガイドライン)。
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Flowens Cat のキャッテリーでの取り組み
当キャッテリー(Flowens Cat)では、お迎え前の健康診断で尿検査・血液検査を実施しています。また、遺伝子検査で先天性疾患リスクの確認も行っています。ペルシャ・エキゾチックショートヘアは全頭PKD陰性を確認済みです。
お迎え後も健康上の疑問がある場合はいつでもご相談ください。全国8拠点の施設一覧から最寄りの窓口をご確認いただけます。
健康な子猫をお探しの方は子猫一覧もご覧ください。健康管理全体の取り組みは健康管理ページでご確認いただけます。
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よくある質問(FAQ)
Q1. おしっこの回数が増えたのに量は少ない。多尿ではないですか?
回数が多くても1回量が少ない場合は「頻尿」であり多尿とは異なります。膀胱炎やストレス性膀胱炎(FIC)が主な原因です。ただし血尿や痛みそうな素振りがあれば、原因に関わらず早めに受診してください。1日8回以上トイレに行き量が出ない場合は、尿道閉塞(特にオス)の緊急サインです。
Q2. 水を与えすぎているだけでは?
猫は必要以上に水を飲む習性はなく、「水をたくさん飲むようになった」こと自体が体の異変のサインです(日本獣医師会でもペット飼育の注意事項として挙げられています)。水皿を変えたなど環境変化がない場合は、受診の目安として考えてください。
Q3. 何歳から多飲多尿に注意すべきですか?
腎臓病・甲状腺機能亢進症は7歳以上で急増しますが、糖尿病は肥満があれば若い猫にも起こります。年齢に関わらず、変化に気づいたらすぐ記録を始めましょう。アニコム損保の保険請求データ(2023年)でも、シニア期以降の泌尿器疾患・内分泌疾患の増加が確認されています。
Q4. 多尿かどうか確認するために動物病院でどんな検査をしますか?
尿比重・尿検査・血液検査(BUN・クレアチニン・血糖・T4など)が基本です。腎機能の早期指標としてSDMAの追加が推奨されます(WSAVA 2022年ガイドライン)。必要に応じてエコー検査も行われます。初診の費用は検査込みで5,000〜15,000円程度が目安です。
Q5. 腎臓病と診断されたらどんな食事に切り替えればいいですか?
獣医師の指示に従い、リン・タンパク質を制限した腎臓病用療法食(ロイヤルカナン腎臓サポート等)に切り替えるのが基本です(IRIS 2023年ガイドライン)。勝手に切り替えず、まず受診して診断を確定させることが大切です。ステージによって適切な処方食が異なります。
Q6. 健康診断済みの子猫でも後から腎臓病になることはありますか?
はい、あります。先天性の腎臓異常はお迎え前の検査で確認できますが、加齢に伴うCKDは後天的に発症します。これは人間と同じく、健康な状態でスタートしても加齢リスクはゼロにはなりません。ただし、健康診断・遺伝子検査済みの個体からスタートし、7歳以降の定期検査を習慣にすることで早期発見の可能性が大幅に高まります。
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まとめ
猫のおしっこが増えた・薄くなったサインは、腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症の早期発見の機会です。いずれも初期段階で対処すれば、その後の生活の質と寿命を大きく左右します。
「なんとなく水をよく飲む気がする」という感覚を大切にして、まずは1週間おしっこ量を記録してみてください。数値として見えると受診のタイミングも判断しやすくなります。
健康管理についてさらに詳しくは健康管理ページをご覧ください。
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免責事項・緊急受診について
本記事はFlowens Cat(ブリーダー)が情報提供を目的として作成したものであり、獣医師・医師による診断・治療の代替となるものではありません。
- 猫の健康状態・症状の判断は必ず獣医師に相談してください
- 「24時間以上おしっこが出ない」「排尿しようとして全く出ない」は緊急疾患(尿道閉塞など)の可能性があり、深夜・休日でも動物救急病院へ連絡してください
- 本記事に掲載する数値・参考データは執筆時点(2026年5月)の情報です。最新の医療ガイドラインは必ず担当獣医師にご確認ください
- Flowens Cat は獣医療機関ではありません。お迎え後の健康管理は主治医との連携のもとで行ってください
緊急時は「夜間 救急 動物病院 + お住まいの地域名」で検索し、最寄りの救急対応病院を事前に把握しておくことを強くお勧めします。
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参考文献・出典
- IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)「Staging of CKD」2023年版 — https://www.iris-kidney.com/guidelines/staging.html
- Elliot J, Barber PJ「Feline chronic renal failure: clinical findings in 80 cases diagnosed between 1992 and 1995」Journal of Veterinary Internal Medicine, 2004 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16359587/
- Sparkes AH et al.「ISFM Consensus Guidelines on the Diagnosis and Management of Feline Chronic Kidney Disease」Journal of Feline Medicine and Surgery, 2016 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26970151/
- Buffington CA et al.「Clinical evaluation of cats with nonobstructive urinary tract diseases」Journal of Veterinary Internal Medicine, 2002 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11694400/
- Roomp K & Rand J「Intensive blood glucose control is safe and effective in diabetic cats using home monitoring and treatment with glargine」Journal of Feline Medicine and Surgery, 2009 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19814770/
- WSAVA「Guidelines for the Identification and Management of Pain in Animals」2022年版 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28349930/
- アニコム損保「家庭どうぶつ白書2023」— https://www.anicom-page.com/hakusho/









