> 獣医師からの警告: 猫の多飲多尿は「腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症」の三大疾患に共通する初期サインです。「水をよく飲むようになった」「トイレの回数・量が増えた」と気づいたら、1週間以内に動物病院を受診することを強くおすすめします。
TL;DR(この記事のポイント)
- 多尿の基準は体重1kgあたり50ml超/日(例: 4kgの猫なら200ml超)
- 多飲多尿の三大原因は慢性腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症
- どれも早期発見で進行を大幅に遅らせられる
- 自宅でのおしっこ量の測り方は簡単、1週間記録するだけでOK
---
猫の多尿とは?1日のおしっこ量の基準
健康な猫のおしっこ量は体重1kgあたり約20〜40ml/日が目安です。これを超えて50ml/kg/日以上が続く場合、医学的に「多尿(ポリウリア)」と定義されます。
体重別・1日のおしっこ量の目安
| 体重 | 正常範囲(目安) | 多尿ライン(要注意) |
|---|---|---|
| 3 kg | 60〜120 ml | 150 ml 超 |
| 4 kg | 80〜160 ml | 200 ml 超 |
| 5 kg | 100〜200 ml | 250 ml 超 |
| 6 kg | 120〜240 ml | 300 ml 超 |
---
多飲多尿を引き起こす三大疾患
1. 慢性腎臓病(CKD)
猫がかかりやすい病気のなかで最も代表的なものです。腎臓のろ過機能が低下すると、希釈された尿が大量につくられます。7歳以上の猫の約30〜40%が罹患するとされ(Journal of Feline Medicine and Surgery, 2016)、早期発見で進行を数年単位で遅らせることが可能です。
主な症状: おしっこ量増加、水をよく飲む、体重減少、食欲低下、嘔吐
2. 糖尿病
インスリンの分泌不足または抵抗性により、血糖が高い状態が続きます。余分なブドウ糖を尿に排出しようとするため多尿になります。肥満の中高齢猫に多く、早期ならインスリン投与で寛解するケースもあります。
主な症状: 大量の水を飲む、おしっこが増える・甘い臭い、食欲旺盛なのに痩せる、後肢の力が弱くなる
3. 甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、10歳以上の猫に多く見られます。代謝が過剰になることで腎臓への血流が増加し、多尿・多飲が起きます。
主な症状: 水・食事量の増加、体重減少、興奮・落ち着きのなさ、毛並みの悪化
疾患×症状の早見表
| 症状 | 腎臓病 | 糖尿病 | 甲状腺亢進症 |
|---|---|---|---|
| 多尿・多飲 | ○ | ○ | ○ |
| 体重減少 | ○ | ○(食欲↑なのに) | ○ |
| 食欲低下 | ○ | × | × |
| 嘔吐 | ○ | △ | △ |
| 興奮・攻撃性 | × | × | ○ |
| 後肢の脱力 | × | ○ | × |
---
ストレス性の頻尿との見分け方
多尿ではなく頻尿(少量のおしっこを何度もする) の場合、原因が異なります。ストレスや膀胱炎(特発性膀胱炎)によるケースが多く、引っ越し・同居猫の変化・環境の急変後に現れやすいです。
見分け方のポイント:
- 多尿: 1回量が多い、尿が薄い
- 頻尿: 1回量は少ない、血尿を伴うことも、水を飲む量は変わらない
---
自宅でできるおしっこ量の測り方
- 測定専用のシリンジ付きトイレ砂(システムトイレ)を使う。砂を入れず、下のトレーにたまった尿量をシリンジで計測する。
- 普通の砂を使っている場合: 未使用の砂を50g分だけトイレに入れ、使用後に重さを量る。砂が吸った重さ(g)≒尿量(ml)として概算できる。
- 記録期間: 最低3〜5日、できれば1週間記録する。
- 体重で割り、1日1kg当たり何mlか計算して上記の表と照合する。
測定が難しい場合は、動物病院で尿比重(尿の濃さ)を検査してもらうだけでも多尿の有無が確認できます。
---
受診すべきタイミングの判断基準
以下に1つでも当てはまる場合は今週中に受診してください。
- [ ] 水を飲む量が明らかに増えた(以前と比べて2倍以上の印象)
- [ ] トイレ砂のびしょびしょ感が強くなった
- [ ] おしっこの色が薄い・ほぼ無色に見える
- [ ] 体重が1ヶ月で10%以上減っている
- [ ] 食欲が落ちた、または逆に食欲旺盛なのに痩せている
- [ ] 7歳以上の猫である
定期検診(年1〜2回の血液・尿検査)でこれらの疾患を早期発見することが最も確実な対策です。
---
Flowens Cat のキャッテリーでの取り組み
当キャッテリー(Flowens Cat)では、お迎え前の健康診断で尿検査・血液検査を実施しています。また、遺伝子検査で先天性疾患リスクの確認も行っています。お迎え後も健康上の疑問がある場合はいつでもご相談ください。関東14拠点の施設一覧から最寄りの窓口をご確認いただけます。
健康な子猫をお探しの方は子猫一覧もご覧ください。
---
よくある質問(FAQ)
Q. おしっこの回数が増えたのに量は少ない。多尿ではないですか? A. 回数が多くても1回量が少ない場合は「頻尿」であり多尿とは異なります。膀胱炎やストレス性膀胱炎が主な原因です。ただし血尿や痛みそうな素振りがあれば、原因に関わらず早めに受診してください。
Q. 水を与えすぎているだけでは? A. 猫は必要以上に水を飲む習性はなく、「水をたくさん飲むようになった」こと自体が体の異変のサインです。水皿を変えたなど環境変化がない場合は、受診の目安として考えてください。
Q. 何歳から多飲多尿に注意すべきですか? A. 腎臓病・甲状腺機能亢進症は7歳以上で急増しますが、糖尿病は肥満があれば若い猫にも起こります。年齢に関わらず、変化に気づいたらすぐ記録を始めましょう。
Q. 多尿かどうか確認するために動物病院でどんな検査をしますか? A. 尿比重・尿検査・血液検査(BUN・クレアチニン・血糖・T4など)が基本です。必要に応じてエコー検査も行われます。初診の費用は検査込みで5,000〜15,000円程度が目安です。
Q. 腎臓病と診断されたらどんな食事に切り替えればいいですか? A. 獣医師の指示に従い、リン・タンパク質を制限した腎臓病用療法食(ロイヤルカナン腎臓サポート等)に切り替えるのが基本です。勝手に切り替えず、まず受診して診断を確定させることが大切です。
---
まとめ
猫のおしっこが増えた・薄くなったサインは、腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症の早期発見の大チャンスです。いずれも初期段階で対処すれば、その後の生活の質と寿命を大きく左右します。
「なんとなく水をよく飲む気がする」という感覚を大切にして、まずは1週間おしっこ量を記録してみてください。数値として見えると受診のタイミングも判断しやすくなります。


