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獣医師に相談すべきサインを見かけたら、すぐに動物病院を受診してください。この記事は情報提供を目的としており、診断・治療の代わりになるものではありません。
この記事の要点
- 猫の糖尿病はインスリン不足で高血糖が続く慢性疾患。中高齢・肥満・去勢オスに多い
- 初期サインは「多飲多尿」「食べているのに痩せる」。見逃すとケトアシドーシスで命に関わる
- 治療の柱はインスリン注射+低炭水化物食。適切な管理で寛解(注射不要)に至る猫も
- 犬と違い、猫は寛解の可能性が高いという大きな特徴がある
- 肥満予防と体重管理が最も確実な予防策
猫の糖尿病とはどんな病気?
猫の糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンが不足または機能不全に陥り、血糖値が慢性的に高い状態が続く病気です。人間の2型糖尿病に近い病態で、インスリンは出ているものの効きが悪くなるケースが多いとされています(日本臨床獣医学フォーラム)。
糖は細胞のエネルギー源ですが、インスリンがなければ細胞に取り込まれません。結果として細胞は「飢餓状態」になり、体は脂肪や筋肉を分解しはじめます。食欲があるのに痩せていく、という症状はこのメカニズムから来ています。
治療せずに放置した場合、糖尿病性ケトアシドーシスという緊急状態に陥り、数週間から数ヶ月で命を落とすリスクがあります。一方、早期に適切な治療を開始した猫では寛解する例もあります。
猫の糖尿病の初期サインは多飲多尿から始まる

猫の糖尿病でもっとも早く現れる症状が多飲多尿です。これは血糖が尿に溢れ出すとき、腎臓が大量の水分も引き連れて排出するために起こります。
見逃してはいけない症状チェックリスト
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| 多飲多尿 | 水を大量に飲む、トイレ回数・量が増える |
| 食欲亢進なのに体重減少 | よく食べているのに明らかに痩せてくる |
| 元気消失・毛艶悪化 | ぐったりする、被毛がパサつく |
| かかとを床につける歩き方 | 後ろ足の神経障害(糖尿病性神経障害)のサイン |
| 口の甘いにおい | ケトアシドーシス進行のサイン(緊急受診が必要) |
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猫の糖尿病の原因とリスク要因

猫が糖尿病を発症する背景には複数の要因が絡み合っています。
主な原因とリスク早見表
| リスク要因 | 詳細 |
|---|---|
| 肥満 | 最大のリスク。脂肪がインスリン抵抗性を高める |
| 加齢(7歳以上) | 膵臓の機能が徐々に低下する |
| 去勢オス | ホルモンバランスの変化で太りやすい |
| 運動不足 | 室内飼育の猫に多い |
| 高炭水化物の食事 | ドライフードに多く含まれる穀物類 |
| ステロイド薬の長期使用 | 薬剤性インスリン抵抗性 |
| 慢性膵炎・アカラメガリー | 膵臓や内分泌機能への影響 |
遺伝的リスクが高い品種
品種による遺伝的リスクも報告されています。バーミーズ(ビルマ)はとくに糖尿病リスクが高いことが複数の疫学研究で一貫して確認されています。オーストラリアの調査(Rand et al., 1997, *Australian Veterinary Journal*)、英国の保険加入猫を対象にした調査(McCann et al., 2007, *Journal of Feline Medicine and Surgery*/非血統種と比べて3.7倍のリスク)、ニュージーランドの血統データ分析(O'Leary et al., 2013, *New Zealand Veterinary Journal*)でそれぞれ報告されています。ロシアンブルーも、スウェーデンの大規模保険データ調査(Öhlund et al., 2015, *Journal of Veterinary Internal Medicine*)でリスクの高い品種として挙げられています(この調査ではアビシニアンも該当)。シャムについては、私たちが調べた範囲では明確な裏付けとなる公表データは見当たりませんでした。
Flowens Catが取り扱う品種のうち、ノルウェージャンフォレストキャットは複数の疫学研究(Öhlund et al., 2015;O'Neill et al., 2016, *Journal of Veterinary Internal Medicine*)で糖尿病リスクが高い品種として報告されています。マンチカン・ラグドール・ブリティッシュショートヘアについては、私たちが調べた範囲では特別なリスク上昇の報告は見当たりませんが、ノルウェージャンフォレストキャットをお迎えの方はとくに体重管理と定期健診を意識してください。大型・肥満傾向の個体は品種を問わず注意が必要です。
猫の糖尿病はどうやって診断するの?
動物病院では以下の検査で診断します。
- 血液検査: 空腹時血糖値を測定。200 mg/dL以上が目安だが、猫はストレスで一時的に高血糖になる「ストレス高血糖」があるため複数回の測定が必要
- 尿検査: 尿糖・尿ケトンを確認。猫が尿に糖を排出し始める腎排泄閾値は約280 mg/dLとされており(Merck Veterinary Manual)、尿糖が出ていればこれを超えている証拠になります(※この閾値は犬では約180 mg/dLとされ、犬と猫で数値が異なる点に注意)
- フルクトサミン検査: 過去2〜3週間の平均血糖値を示す指標。ストレス高血糖との鑑別に有用
- 胸部・腹部X線・超音波: 他の疾患や膵炎の合併を確認
診断にかかる費用は動物病院によって異なりますが、初診時の検査で2〜3万円が目安とされています。
猫の糖尿病の治療:インスリン注射と食事療法

インスリン注射
治療の基本はインスリン注射です。猫用に承認されたインスリン(プロジンク、ランタスなど)を1日1〜2回、自宅で皮下注射します。針は細く短いため、ほとんどの猫は注射を嫌がりません。適切な方法を獣医師から指導してもらいましょう。
注射のタイミングは食事と合わせるのが一般的です。食事を食べない場合には用量調整が必要なため、獣医師の指示に従ってください。
定期的な血糖値モニタリングも必須です。自宅での血糖測定には猫用の血糖測定器が使えます。通院での血糖曲線(12〜24時間の測定)と組み合わせて管理します。
食事療法:低炭水化物食が重要
猫は肉食動物であり、炭水化物を消化・代謝する酵素活性が低いという生理的特性があります。このため、糖尿病の猫には高タンパク・低炭水化物食が推奨されます。代謝エネルギーに占める炭水化物比率10%以下の「超低炭水化物食」を血糖コントロールのプロトコルに用いた報告があります(Roomp & Rand, 2009, *Journal of Feline Medicine and Surgery*)。
- ウェットフード(缶詰・パウチ): 総じてドライより炭水化物が少なく適している
- 糖尿病用療法食: 獣医師処方の専用フード(Hill's m/d、Royal Canin Diabeticなど)
- チュールは基本NG: 糖質を含む嗜好品は血糖値を急上昇させるため、治療中は避けるのが原則(獣医師に要相談)
食欲がない猫のケアと並行して食事の内容を見直すことが、血糖管理の鍵になります。
猫の糖尿病は「寛解」できる?犬との違い

猫の糖尿病の大きな特徴が寛解(Remission)の可能性です。これは犬の糖尿病と根本的に異なる点です。
犬の糖尿病はほぼすべてインスリン依存性(1型に近い)で、一度発症するとインスリン注射が生涯必要です。
猫の糖尿病の多くは「非インスリン依存性」の側面を持ち、適切な治療と体重管理によって膵臓の機能が回復し、インスリン注射が不要になる「寛解」状態に達することがあります。
寛解の可能性を高める条件:
- 発症から早期(3〜6ヶ月以内)に治療を開始する
- 低炭水化物食に切り替える
- 適正体重を達成する
- 他の誘因疾患(ステロイド使用など)を解消する
寛解率は研究によって大きく異なりますが、Roomp & Rand(2009, *Journal of Feline Medicine and Surgery*)が自宅血糖モニタリング・超低炭水化物食・インスリン グラルギンを組み合わせたプロトコルで55頭の糖尿病猫を管理した報告では、全体で64%が寛解に至りました。とくに診断から6ヶ月以内にこのプロトコルを開始した猫では84%が寛解した一方、6ヶ月を超えてから開始した猫では35%にとどまっており、早期の介入が寛解率を大きく左右することが示されています。
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猫の糖尿病の予防とFlowens Catのブリーダーとしての取り組み

糖尿病の最大の予防策は肥満にさせないことです。
予防のための5つのポイント
- 適正体重の維持: 理想体重から20%以上の過体重は糖尿病リスクを大幅に高めます
- 食事管理: 高タンパク・低炭水化物の食事を心がける。おやつは最小限に
- 適度な運動: 1日15〜20分の遊びで肥満・インスリン抵抗性を予防
- 定期健診: 7歳を超えたら年1〜2回の血液・尿検査を推奨
- 早期のサイン把握: 多飲多尿・体重減少に気づいたらすぐ受診
当キャッテリー・Flowens Catでは、子猫のお引き渡し時に適正な食事量・体重管理の方法についても丁寧にご案内しています。お迎え後の健康管理については、獣医師との連携のもと安心してスタートできる体制を整えています。
体重が急に減ってきたと感じたら、それ自体が重要なサインです。すぐに動物病院に相談してください。
よくある質問(FAQ)
猫の糖尿病は治りますか?
完全な「治癒」とは言えませんが、猫の場合は「寛解」(インスリン注射が不要になる状態)に至ることがあります。寛解率は研究によって幅がありますが、早期発見・低炭水化物食・体重管理の組み合わせで、診断から6ヶ月以内に治療を開始した猫の8割以上が寛解したという報告もあります(Roomp & Rand, 2009, *Journal of Feline Medicine and Surgery*)。犬の糖尿病と異なり、猫は寛解の可能性がある点が大きな特徴です。
糖尿病の猫にチュールは与えてもいいですか?
基本的には避けてください。チュールは嗜好性が高い半面、糖質を含み血糖値を急上昇させる可能性があります。治療中は必ず担当獣医師に相談の上、与えるかどうか判断してください。
猫の糖尿病のインスリン注射はいくらかかりますか?
インスリン製剤の費用は月3,000〜8,000円程度が目安です。これに加えて通院・血液検査費用(1回3,000〜5,000円)が定期的にかかります。ペット保険でカバーできる場合もあるため、加入状況を確認してください。
猫の糖尿病で多飲多尿以外に気づけるサインはありますか?
「食べているのに痩せる」「後ろ足をかかとまでつけて歩く(足底歩行)」「毛艶が悪くなる」などが初期〜中期のサインです。口から甘い・アセトン臭がする場合はケトアシドーシスの疑いがあり、今すぐ受診が必要です。
糖尿病の猫の寿命はどれくらいですか?
適切な治療と管理を行えば、診断後も数年から10年以上生きる猫も少なくありません。寛解した猫はとくに予後が良好です。一方、無治療や管理不良では数ヶ月で命に関わる合併症(ケトアシドーシス)を起こします。早期発見・継続管理が寿命を大きく左右します。
まとめ
猫の糖尿病は「多飲多尿」「食べているのに痩せる」という初期サインを見逃さないことが大切です。早期に診断・治療を開始し、低炭水化物食と体重管理を組み合わせることで、寛解の可能性もあります。これは犬と大きく異なる猫の糖尿病の特徴です。
健康な子猫からのスタートが、こうした病気の予防にも繋がります。Flowens Catでは、健康管理を重視した子猫をお届けしています。現在の子猫一覧もぜひご覧ください。気になることがあればよくある質問もご参考に。
出典
- Merck Veterinary Manual「Diabetes Mellitus in Dogs and Cats」 https://www.merckvetmanual.com/endocrine-system/the-pancreas/diabetes-mellitus-in-dogs-and-cats (猫の腎排泄閾値:約280 mg/dL、犬:約180 mg/dL)
- Rand JS, Bobbermien LM, Hendrikz JK, Copland M. "Over representation of Burmese cats with diabetes mellitus." *Australian Veterinary Journal*. 1997;75(6):402-5. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9247686/
- McCann TM, Simpson KE, Shaw DJ, Butt JA, Gunn-Moore DA. "Feline diabetes mellitus in the UK: the prevalence within an insured cat population and a questionnaire-based putative risk factor analysis." *Journal of Feline Medicine and Surgery*. 2007;9(4):289-99. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17392005/
- O'Leary CA, Duffy DL, Gething MA, McGuckin C, Rand JS. "Investigation of diabetes mellitus in Burmese cats as an inherited trait: a preliminary study." *New Zealand Veterinary Journal*. 2013;61(6):354-8. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23909918/
- Öhlund M, Fall T, Ström Holst B, Hansson-Hamlin H, Bonnett B, Egenvall A. "Incidence of Diabetes Mellitus in Insured Swedish Cats in Relation to Age, Breed and Sex." *Journal of Veterinary Internal Medicine*. 2015;29(5):1342-7. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26179258/
- O'Neill DG, Gostelow R, Orme C, Church DB, Niessen SJ, Verheyen K, Brodbelt DC. "Epidemiology of Diabetes Mellitus among 193,435 Cats Attending Primary-Care Veterinary Practices in England." *Journal of Veterinary Internal Medicine*. 2016;30(4):964-72. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27353396/
- Roomp K, Rand J. "Intensive blood glucose control is safe and effective in diabetic cats using home monitoring and treatment with glargine." *Journal of Feline Medicine and Surgery*. 2009;11(8):668-82. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19592286/
※ 記事内の画像はイメージです。実際にお迎えいただける子猫の写真は子猫一覧でご覧いただけます。








