> 警告: 2日以上排便がない・繰り返し吐こうとするのに何も出ない・食欲がない・ぐったりしている、これらが重なる場合は毛球による腸閉塞の可能性があります。腸閉塞は緊急手術が必要な案件です。すぐに動物病院に連絡してください。この記事は一般的な情報提供を目的とし、診断・治療の代替にはなりません。
TL;DR(この記事のまとめ)
- 毛球症は飲み込んだ毛が胃や腸に蓄積する病気で、放置すると消化管閉塞・緊急手術に至ることがある
- 「吐いて終わり」の毛玉吐きとは別物。吐けずにいる・排便がない・元気がない場合は緊急サイン
- ペルシャ・ノルウェージャンフォレストキャット・ラガマフィンなど長毛種は短毛種の2〜3倍リスクが高い
- 毎日のブラッシングが最も効果的な予防策。毛球ケアフードやモルトペーストと組み合わせるとさらに効果的
- 月1〜2回の毛玉吐きは正常範囲だが、週複数回・吐けない症状が続くなら受診を
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毛球症とはどんな病気?
毛球症(もうきゅうしょう)とは、猫がグルーミング中に飲み込んだ被毛が消化管の中で塊(毛球・ヘアボール)を形成し、さまざまな消化器症状を引き起こす病態です。
猫の舌には「糸状乳頭」と呼ばれるトゲ状の突起が無数にあり、グルーミングのたびに大量の毛をからめとります。飲み込まれた毛は本来、腸のぜん動運動によって便と一緒に排出されますが、排出が間に合わないほど毛が蓄積すると胃や腸で固まり、毛球を形成します。
毛玉を「吐いて排出できれば」生理的な範囲ですが、吐けないまま毛球が大きくなると腸閉塞(イレウス)を引き起こし、最悪の場合は外科手術が必要になります。「吐き戻し=毛球症」ではなく、吐けない毛球こそが本当のリスクです。
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毛球症の症状チェックリスト
以下の症状が2つ以上重なる場合は、毛球症を疑って獣医師に相談してください。
| 症状 | 緊急度 |
|---|---|
| 「ゲェゲェ」と繰り返すが何も出ない | 高 |
| 2日以上排便がない(便秘) | 高 |
| 食欲が著しく落ちた | 高 |
| 元気がなく、横になったまま動かない | 高 |
| お腹を触ると張っている、嫌がる | 高 |
| 水を飲まなくなった | 中〜高 |
| 毛玉の塊を吐く(月3回以上) | 中 |
| 毛の混じった便が出る | 低〜中 |
| 食欲はあるが毛玉を月1〜2回吐く | 低(経過観察) |
「毛玉吐き」と「毛球症」はどう違う?
猫の毛玉吐きを「よくあること」と軽視しがちですが、毛球症は段階的に悪化します。猫の吐き戻しの記事でも触れた通り、月1〜2回程度の毛玉吐きは正常範囲です。しかし毛球症になると様子が変わります。
正常な毛玉吐き
- 吐いた後は元気で食欲もある
- 吐物は細長い毛の塊(ソーセージ状)
- 月1〜2回程度
毛球症が疑われる状態
- 吐こうとしても出てこない(空嘔吐・乾嘔吐)
- 吐いた後も元気がなく、食欲が回復しない
- 上記が繰り返される・排便が止まっている
「吐ける」うちはまだよいのです。吐けなくなったとき、毛球は消化管の中で詰まりはじめています。
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長毛種のリスクはなぜ高い?ペルシャ・ノルウェージャン・ラガマフィンの場合
長毛種が毛球症になりやすい理由は3つあります。
- 毛量が多い — 1回のグルーミングで飲み込む毛の量が短毛種の2〜3倍になる
- 毛が長くからまりやすい — 長い毛は腸の中で塊になりやすく、排出が困難
- セルフグルーミングが念入り — 長い被毛を整えるために時間をかけてグルーミングする習性がある
特にペルシャはダブルコートで超長毛のため、ブラッシングなしでは毎週のように毛玉を吐くケースもあります。ノルウェージャンフォレストキャットは換毛期(春・秋)に毛が大量に抜け、この時期に毛球症リスクが急上昇します。ラガマフィンはシルキーな長毛が美しい一方、グルーミング好きな性格も相まって飲み込む毛量が多くなります。
当キャッテリーでは、これらの長毛種をお迎えいただく際に品種別の毛球症予防プロトコルをお伝えしています。
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予防その1:ブラッシング頻度が毛球症リスクを左右する
毛球症予防において最も効果が高く、費用もかからない方法がブラッシングです。ブラッシングで抜け毛を取り除けば、猫が飲み込む毛の量を大幅に減らせます。
| 品種タイプ | 推奨ブラッシング頻度 | ポイント |
|---|---|---|
| 長毛種(ペルシャ・ラガマフィン等) | 毎日 | アンダーコートまで届くスリッカーブラシが有効 |
| 半長毛種(ノルウェージャン等) | 週3〜5回(換毛期は毎日) | 換毛期は量が激増するため要注意 |
| 短毛種(ブリティッシュ等) | 週1〜2回 | 換毛期は週3回に増やすと効果的 |
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予防その2:毛球ケアフードとモルトペーストの活用
ブラッシングと並行して、消化管からの毛球排出を助けるアイテムを活用することで相乗効果が得られます。
毛球ケア専用フード
食物繊維(セルロース・プサイリウムハスクなど)を多く含み、腸のぜん動運動を活性化して飲み込んだ毛を便と一緒に排出しやすくします。長毛種には毛球ケアフードをレギュラーとして使うことを、当キャッテリーでは推奨しています。
毛球除去ジェル(モルトペースト)
石油由来のワセリンや植物油を主成分とするペーストで、胃の中の毛を潤滑して排出を促します。週2〜3回を目安に、指先や前足に塗り与えます(猫が自分で舐めとります)。毛球吐きが増えた時期の一時的な使用にも有効です。
猫草
自然に嘔吐反射を促し、毛球の排出を助けます。屋内飼育の猫では意識的に提供するとよいでしょう。農薬を使っていない安全なものを選んでください。
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毛球症の治療:動物病院ではどんな処置が行われるか
動物病院での治療は、毛球の状態と位置によって異なります。
軽度(胃内に毛球がある段階)
- 毛球溶解ジェル・内服薬による排出促進
- 下剤による便通改善
- 食事療法(高繊維食への切り替え)
中等度(腸に詰まりはじめている)
- 点滴・内服薬・浣腸などによる保存療法
- 経過観察入院
重度(完全閉塞・腸閉塞)
- 外科手術(開腹) が必要になるケースがある
- 発見が遅れるほど手術リスク・費用・回復期間が上がるため、早期受診が非常に重要
腸閉塞は命に関わる緊急事態です。「様子を見よう」と迷っている時間が命取りになることがあります。疑わしい症状があれば迷わず動物病院に連絡してください。
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Flowens Cat の長毛種ケアプロトコル
当キャッテリーでは、長毛種のお迎え時に以下の毛球症予防プロトコルをお伝えしています。
- 毎日のブラッシング習慣をお迎え直後から始める — 子猫のうちにブラッシングに慣らすことが重要
- 毛球ケアフードを基本食として選択 — 子猫用から成猫用への切り替えタイミングも含めて案内
- 換毛期(3〜5月・9〜11月)は頻度を倍に — この時期は特にモルトペーストを積極活用
- 月に1回、お腹のハリと便の状態を確認 — 毛が混じった便が出ているか、便秘になっていないかをチェック
- 年1回の定期健診で消化器の状態を確認 — 早期発見・早期対処のために獣医師による定期チェックを推奨
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よくある質問(FAQ)
Q. 毛球症と毛玉吐きはどう見分けますか? A. 吐いた後に元気で食欲があれば多くは生理的な毛玉吐きです。吐こうとしても出ない・吐いた後も元気がない・排便が止まっているなど複数の症状が重なる場合は毛球症を疑い、動物病院を受診してください。
Q. 月に何回吐いたら受診すべきですか? A. 毛玉吐きが月3回以上・週1回以上の頻度になる場合は受診を推奨します。回数が少なくても「吐けない・空嘔吐が続く・便秘」が同時に起きている場合はすぐに受診してください。
Q. 短毛種でも毛球症になりますか? A. なります。短毛種でも過度なグルーミング(ストレス性など)や換毛期には毛球症リスクが上がります。ただし長毛種より頻度は低いため、週1〜2回のブラッシングと定期的な健康チェックが基本対策です。
Q. モルトペーストは毎日使っていいですか? A. 毎日の使用は消化管の動きを必要以上に刺激するため、週2〜3回が目安です。製品によって用量が異なるため、パッケージの指示に従ってください。毛球症が疑われる状態では自己判断での大量投与はせず、まず受診してください。
Q. 毛球症の手術費用はどれくらいかかりますか? A. 腸閉塞の外科手術は症状や病院によって異なりますが、一般的に10〜30万円程度かかるケースが多いです。ペット保険に加入していれば補償対象になる場合があります。長毛種を飼育する場合はペット保険の検討もお勧めします。
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まとめ:毛球症は「予防」と「早期発見」がすべて
猫の毛球症は、毎日のブラッシングと適切なフード選びで大幅にリスクを下げられる病気です。一方で、発見が遅れると腸閉塞・緊急手術という深刻な事態に発展します。
特にペルシャ・ノルウェージャンフォレストキャット・ラガマフィンなどの長毛種を飼育する場合は、毎日のブラッシングを「習慣」として定着させることが最大の予防策です。換毛期には頻度を増やし、「吐けない・便が出ない・元気がない」の3点セットが重なったときは迷わず動物病院へ。
Flowens Catでは、お迎え後の健康相談も承っています。長毛種のケアに不安のある方は、ぜひ子猫一覧からご相談ください。


