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健康管理2026-10-03

犬アレルギーと猫アレルギーの違い|猫は大丈夫?【2026】

犬アレルギーと猫アレルギーの違いは、原因のたんぱく質が別で、猫は主犯が1つ、犬はばらばらな点です。犬アレルギーでも猫は大丈夫かは言い切れません。欧州の受診者では猫26%・犬27%でした。ブリーダーが論文を開いて確かめ直し、迎える前の確かめ方もまとめました。

犬アレルギーと猫アレルギーの違い|猫は大丈夫?【2026】
目次ひらく(全13章)
  1. 01犬アレルギーと猫アレルギーの違いは?論文を確かめ直して分かったこと
  2. 02よく見る説明5つを論文で確かめ直した結果|そのまま支える論文は見つからず
  3. 03犬アレルギーと猫アレルギーの違いを一覧で比べる
  4. 04猫アレルギーは主犯が1つ、犬アレルギーは主犯がばらばら
  5. 05犬アレルギーでも猫は大丈夫?猫アレルギーでも犬は?
  6. 06猫アレルギーと犬アレルギーはどちらが多い?決着していない
  7. 07猫のアレルゲンは犬より小さい?小さい粒の割合は猫約23%・犬約20%
  8. 08犬アレルギーのほうが検査で見つけにくい理由
  9. 09犬だけの落とし穴|オス犬と「低アレルゲン犬種」
  10. 10犬アレルギーの人が猫を迎える前に確かめる5つの順番
  11. 11よくある質問
  12. 12まとめ
  13. 13出典

この記事の要点:違いは、猫は原因のたんぱく質が1つに集まり、犬はばらばらで検査も難しい点です。犬アレルギーでも猫が大丈夫かは言い切れず、検査と実際の接触で個別に確かめるしかありません。

犬アレルギーと猫アレルギーの違いは?論文を確かめ直して分かったこと

リビングのカーペットに伏せる柴犬と、その隣に座るキジトラの子猫

先に答えると、犬と猫のアレルギーの違いとして論文で確かめられたのは、猫は主犯のたんぱく質が1つで犬はばらばらなこと、犬のほうが検査で見つけにくいこと、オス犬にだけ反応する人がいることの3つでした。よく見かける説明のいくつかは、確かめられませんでした。

「犬アレルギーなのに、猫なら大丈夫だろうか」「猫アレルギーの家族がいるけれど、犬なら迎えられるだろうか」。犬と猫のどちらを迎えるか考えるとき、避けて通れない疑問ですね。

調べると、「原因のたんぱく質が別」「猫のアレルゲンは粒子が小さく、犬のは重くて沈む」「猫アレルギーは犬の2倍多い」といった説明が並びます。アレルゲンは毛そのものではなく、フケ・唾液・皮脂に含まれる、アレルギーの原因になるたんぱく質のことです。私たちブリーダーも、これに近い説明を疑わずに書いてきました。そこでこの記事を書くにあたり、根拠になっていそうな論文を、要旨や本文まで開いて確かめ直しました。確認日は2026年10月3日です。

当社は医療機関ではなく、アレルギーの診断も治療もできません。ここに書くのは「論文に何が書いてあったか」の整理で、個別の「大丈夫」を示すものではありません。症状の見分け方は猫アレルギー症状の見分け方と受診目安、猫の品種や暮らしの工夫は猫アレルギーでも飼える?低アレルゲン品種と7つの対策に書いたので、ここでは犬と猫を並べたときの違いに絞ります。

よく見る説明5つを論文で確かめ直した結果|そのまま支える論文は見つからず

よく見かける説明を5つ取り上げ、論文で確かめられたかを整理しました。5つとも、私たちが確かめた範囲では、そのままの形で支える論文は見つかりませんでした。

よく見る説明確かめた結果
猫のアレルゲンは粒子が小さく空中に漂い、犬のは重くて沈む空中で小さい粒にのっている割合は、平均で猫が約23%(別の測定で約25%)、犬が約20%でほぼ同じだった
猫アレルギーは犬アレルギーの2倍出典とされる米国の団体(AAFA)の現行ページに、その比較は見当たらない。欧州の受診者では猫26%・犬27%
猫アレルギーでも犬は大丈夫(交差反応はごくまれ)猫と犬への反応が同じ人に重なりやすいことを示す調査がある。「ごくまれ」を支える研究は見つからなかった
「低アレルゲン」の犬種なら大丈夫「低アレルゲン」とされる犬種の毛には、むしろ原因たんぱく質が多かった。家の中の量はほとんど変わらなかった
犬のアレルゲンは猫ほど広がらず、衣服で運ばれにくい小学校の衣服と教室57サンプルすべてから猫と犬の両方が見つかり、濃度は犬のほうが高かった
説明が間違いだと言いたいわけではありません。「猫のほうが症状が出やすい」という印象は、公的機関の医師のコラムにも書かれています。ただ、犬と猫を同じ条件で直接比べた研究を確認できなかったので、断定は避けます。一方、先にあげた3つの違いは、このあと順に論文の中身を見ていきます。

犬アレルギーと猫アレルギーの違いを一覧で比べる

スタンドライトに照らされた机に論文のプリントが広がり、眼鏡とペンの横で丸くなって眠る猫

一覧にすると、違いは名前よりも「主犯の数」と「検査のしやすさ」に出ます。Fel d 1(フェル・ディー・ワン)は猫、Can f 1〜7(カン・エフ・ワン〜セブン)は犬のアレルゲンにつけられた名前です。

比べる点猫犬出典
名前のついた原因たんぱく質8種類。主役は Fel d 17種類。他を圧倒する主役がいないChan と Leung 2018
主役のたんぱく質に反応する人最大96%が Fel d 1 に反応(猫の血液検査で陽性だった血清509件では94〜96%)Can f 1 に反応するのは最大64%。別の調査では37人中26人(70%)が Can f 5 に反応Chan と Leung 2018、van Ree 1999、Mattsson 2009
空中で小さい粒にのっている割合(平均)約23%(別の測定で約25%)約20%Custovic 1998、Luczynska 1990、Custovic 1997
オスとメスオスのほうが高い傾向(成猫5頭ずつの小規模な実験)Can f 5 だけに反応する7人は、オス犬の液で全員が反応し、メス犬の液では1人Jalil-Colome 1996、Schoos 2020
皮膚テストの液Fel d 1 を基準に標準化できる標準化されていない。欧州5社で総たんぱく量が20倍違ったChan と Leung 2018、Curin 2011
皮膚テストと血液検査の一致率62.2%52.2%(当時の血液検査法・猫も犬も90人)Chinoy 2005
洗った効果浸水洗浄で3時間後の空中の量は減るが、1週間後は維持されない毛の量は84%減るが、3日目には洗う前と変わらないAvner 1997、Hodson 1999
数字は研究ごとに、対象も測り方も違います。同じ行の猫と犬を並べても、測った家庭や集団は別なので、「猫は犬より何倍」といった比べ方はできません。「洗った効果」の行は、洗うことをすすめるものではなく、洗って減った量が長くは続かないという事実の紹介です。

猫アレルギーは主犯が1つ、犬アレルギーは主犯がばらばら

猫アレルギーの原因は、大部分が1つのたんぱく質(Fel d 1)に集まります。犬にはそれに当たる主役がいません。犬と猫の違いのうち、いちばん大きいのがここです。

猫のほうは、オランダの研究チーム(van Ree ら、1999年、*J Allergy Clin Immunol*)が調べています。猫の血液検査で陽性だった血清509件のうち、精製した Fel d 1 に反応したのは自然型で94.1%、組換え型で96.1%でした。猫に対する IgE(アレルギー反応にかかわる抗体)の反応全体のうち、88%が Fel d 1 によるものです。

犬のほうは、様子が違います。スウェーデンの研究チーム(Mattsson ら、2009年、*J Allergy Clin Immunol*)が見つけた前立腺カリクレイン(Can f 5 と呼ばれます)には、犬アレルギーの人37人のうち26人(70%)の血清が反応しました。うち14人は、それまで知られていた Can f 1・2・3 のどれにも反応していませんでした。37人と少人数の研究ですが、「犬の主犯は Can f 1」という見方では説明できない人がいることを示しています。総説(Chan と Leung、2018年)も、猫の Fel d 1 は猫アレルギーの人の最大96%が反応するのに対し、犬の Can f 1 に反応するのは犬アレルギーの人の最大64%にとどまり、Fel d 1 ほど他を圧倒する主役が犬にはいない、と整理しています。

ここから先は、論文の記述をつなげた私たちの整理です。犬は、人によって反応しているたんぱく質が違いやすく、同じ「犬アレルギー」でも反応先が人ごとに散らばります。そのため、検査に使う液を標準化しにくく、「低アレルゲン」の看板も立てにくくなります。この2点は、あとの節で詳しく見ます。

なお、主犯が1つだからといって、猫のほうが症状が軽い、あるいは重いという話ではありません。猫の品種ごとの Fel d 1 の量は猫アレルギーでも飼える?低アレルゲン品種と7つの対策で扱っているので、ここでは触れません。

犬アレルギーでも猫は大丈夫?猫アレルギーでも犬は?

ソファでティッシュを鼻に当て、隣のクッションに座る子猫を見つめる女性

「大丈夫」とも「危ない」とも言えません。片方だけに反応する人もいれば、両方に反応する人もいて、どちらなのかは検査と実際の接触でしか分からないからです。

「片方だけ」の人は、何に反応しているのか

トルコの研究チーム(Sekerel と Aliyeva、2024年、*Pediatr Allergy Immunol*)は、猫・犬・馬の14種類のアレルゲンのどれかに感作(そのたんぱく質に体が反応する準備ができた状態)していた子ども120人を調べました。その結果、猫の Fel d 1、犬の Can f 4 と Can f 5、馬の Equ c 4 への反応は、ほかの分子への反応とは異なるパターンを示しました。著者らは、これらはそれぞれの動物自身に対する本物の感作を表している可能性があると述べています。

私たちの読み方になりますが、「猫だけ」の人は Fel d 1 だけ、「犬だけ」の人は Can f 4 や Can f 5 などだけに反応している、という形が考えられます。ただし、120人の小児を対象にした解析なので、そのまま大人にも当てはまるとは限りません。

「両方」になる道は2つある

両方に反応する人が出る理由として、論文には2つの経路が出てきます。

1つ目は、血清アルブミンです。 血液やフケに含まれるたんぱく質で、猫(Fel d 2)・犬(Can f 3)・馬(Equ c 3)のものへの反応は、前出の Sekerel らの解析で互いに強く相関していました。ルクセンブルクの研究(Hilger ら、1997年、*Allergy*)では、猫アレルギーの人の14〜23%が猫のアルブミンに感作していました。同論文は、猫のアルブミンへの感作を、ほかの哺乳類のアルブミンにも交差しうる目印と位置づけています(猫から豚のアルブミンへ交差する例も報告されています。気になる症状があれば医師に相談してください)。ただし、猫への反応全体の中では小さな部分です。前出の van Ree らの研究で、猫のアルブミンに反応した血清は16.7%でした。

2つ目は、リポカリンというたんぱく質の仲間です。 犬の Can f 6 は、猫の Fel d 4、馬の Equ c 1 とよく似ています。一方のたんぱく質がもう一方への抗体の結合を妨げるかを調べる実験(競合ELISA)で、交差が示されました(Nilsson ら、2012年、*Allergy*)。Can f 6 に反応するのは、犬に感作した人の38%です。前出の Sekerel らの研究でも、リポカリン同士の反応は互いに強く相関していました。

複数に反応する人は、どのくらいいるのか

両方に反応する人の割合を示せる確かな数字は、確認できていません。確かめられたのは、米国の大規模調査(Salo ら、2014年、*J Allergy Clin Immunol*)の結果です。6歳以上の人の血液を調べたところ、猫と犬に対する IgE は同じまとまりに入り、相関係数は0.78以上でした。猫への IgE が高い人は、犬への IgE も高い傾向があるということです。ただ、これは「同時に起きやすい」ことの目安で、交差反応のせいなのか、別々に感作したのかまでは分けられません。著者らも、交差反応は重要だが唯一の原因ではないかもしれない、と書いています。

なお、次の2つの数字は根拠を確かめられなかったので、事実としては使いません。1つは、Nilsson らの論文が冒頭の背景として書く「患者の4人に3人は複数のペットにアレルギーがある」で、その母集団と根拠になった原著を私たちは確認できていません。もう1つは、Salo らの調査を紹介した前出の総説(Chan と Leung)にある「犬猫への感作は約12%、そのうち78%が両方」で、原著の本文に「78%」に当たる数字は見つかりませんでした。相関係数0.78以上を読み違えた可能性がありますが、確かめられていません。

「交差反応はごくまれ」という説明も見かけますが、それを支える研究は見つけられませんでした。決められるのは、個別の検査と、実際の接触だけです。とくに複数の動物に感作している人では、分子ごとに調べる成分別の検査が強く推奨される場合があると、欧州のコンセンサス文書(Dávila ら、2018年、*Allergy*)も書いています。日本の医療機関で成分別の検査が受けられるか、保険が通るかは、私たちは確認できていません。受診先で聞いてください。

猫アレルギーと犬アレルギーはどちらが多い?決着していない

どちらが多いかは決着していません。確かめられた数字は「欧州の受診者で猫26%・犬27%」で、ほぼ同じです。日本の犬猫別の数字は、一次資料では見つけられませんでした。

吸入性のアレルゲンを疑って受診した欧州の成人では、猫に感作していたのが26%、犬が27%と推定されています(前出の Dávila ら)。一般の人口ではなく、受診した人の数字です。同じ文書は、感作の割合は国・曝露の期間・アトピー素因によって変わるとも述べています。米国の6歳以上を調べた前出の Salo らの調査では、犬または猫に感作していたのは15.7%でしたが、犬と猫をまとめた数字で、別々の割合は私たちには確認できていません。

アジアの数字を紹介した総説(Chan と Leung、2018年)では、向きが一定しません。原著は私たちが開いておらず、孫引きです。総説の参考文献の題名を見ると、スリランカは喘息で受診した子ども、中国の2件はアレルギー性鼻炎の子どもや患者が対象のようで、一般の人口の数字ではない可能性があります。

調査猫に感作犬に感作
スリランカ12.2%8.9%
中国・鄭州(毛への感作)30.8%34.5%
中国・広東(発展した地域)8.1%11.8%
中国・広東(発展途上の地域)8.7%7.1%
「猫は犬の2倍」という説明も見かけます。あるペット情報サイトには「米国喘息・アレルギー基金の調査では、人に対して、猫は犬に比べて2倍アレルギーを引き起こしやすいとされています」とあります。そこで同基金(AAFA)の現行ページ(2024年9月に医療レビュー)を開いて探しましたが、犬と猫の比較は書かれておらず、あったのは「犬と猫のアレルギーは世界人口の10〜20%」という記述でした。過去の版にあった可能性までは確認できていません。

「猫のほうが症状が出やすい」という印象は、環境再生保全機構の医師のコラム(「特に猫アレルゲンは強力で、感受性のある人では少量でも症状が出ることがあります」)にもあります。ただし、そこに数値や研究名はありません。症状の強さを犬と猫で直接比べた研究も、私たちは確認できませんでした。だから「猫のほうが強い」も「犬と同じ」も、断定しません。

猫のアレルゲンは犬より小さい?小さい粒の割合は猫約23%・犬約20%

窓辺の日だまりに座り、前足をなめて毛づくろいをする猫

よく見る説明は「猫のアレルゲンは粒子が小さくて空中に漂い、犬のは重くて沈む」です。同じ研究グループが同じ装置で測った値では、空中で小さい粒にのっている割合は平均で猫が約23%、犬が約20%で、ほぼ同じでした。

英国の研究チーム(Custovic ら、1998年、*Thorax*)は、猫のいる家10軒の空気を粒の大きさ別に集めました。Fel d 1 の約49%は9マイクロメートルより大きな粒に、約23%は4.7マイクロメートルより小さな粒にのっていました。犬のほうも、同じ研究グループが同じ種類の装置で測っています(Custovic ら、1997年、*Am J Respir Crit Care Med*)。犬のいる家と犬を扱う施設で測った Can f 1 の42〜49%は9マイクロメートルより大きな粒に、約20%は5マイクロメートルより小さな粒にのっていました。

別のグループの測定(Luczynska ら、1990年、*Am Rev Respir Dis*)では、猫のいる家9軒で、5マイクロメートル以上が75%、2.5マイクロメートル以下が25%でした。家ごとの幅は10〜62%と大きく、1軒の繰り返し測定では約60%という例もありました。一方、換気が1時間に約15回の猫の飼育施設では、小さい粒は2%未満でした。著者らは、家庭との違いの主なものは換気回数だと見ています。小さい粒の割合は、家の条件で大きく変わります。

小さい粒は長く空中に残ります。猫4頭のいる1軒の家で居間から猫を出して測ったところ、大きい粒は2日後に最初の13%まで減った一方、小さい粒の量は1・2・4日目でほとんど変わらず、14日目に最初の33%まで下がりました(前出の Custovic ら、1998年)。犬で同じ実験をした研究は確認できませんでした。

測った家も国も年代も違うので、単純には比べられません。それでも、平均で見るかぎり、猫のほうが小さい粒の割合が高いとは言えませんでした。「猫のほうが症状が出やすい」という印象を否定するものではなく、説明のうち「粒子が小さいから」の部分が裏付けられなかった、という話です。前出の環境再生保全機構のコラムも、猫と犬のアレルゲンの両方について「非常に小さく空気中に長時間漂いやすい」と書いています。

衣服や教室で見つかるのは、猫だけではない

スウェーデンの小学校の研究(Berge ら、1998年、*Pediatr Allergy Immunol*)では、子ども31人の衣服と教室から57サンプルを集めました。すべてのサンプルから、猫と犬の両方のアレルゲンが見つかりました。細かいほこり1gあたりの濃度は、衣服で Can f 1 が2,676 ng、Fel d 1 が444 ng、教室で Can f 1 が1,092 ng、Fel d 1 が240 ng と、犬のほうが高い結果でした。犬を飼っている子の衣服では、Can f 1 が8,434 ng でした。

違うたんぱく質の ng を比べても、アレルギーを起こす強さの比較にはなりません。それでも「犬のアレルゲンは猫ほど広がらない」とは言えないことは分かります。前出の AAFA のページには「猫のアレルゲンはとくにくっつきやすい」という記述もありますが、数値は伴っていません。また、ペットのいない家でも、空気中から猫のアレルゲンが75軒中22軒で、犬のアレルゲンが36軒中11軒で見つかっています(前出の Custovic らの2本の論文)。

犬アレルギーのほうが検査で見つけにくい理由

総説(前出の Chan と Leung)は、猫の感作は診断しやすいが、犬は対照的に難しいと述べています。理由として挙げられているのは、犬の皮膚テストに使う液が標準化されていないことと、主役になるたんぱく質が1つではないことです。液に含まれない成分に反応している人は、犬に感作していないと見誤られるおそれがある、とも書かれています。

ウィーンの研究チーム(Curin ら、2011年、*Int Arch Allergy Immunol*)は、欧州5社の犬の皮膚テスト液を比べました。総たんぱく質量が20倍違い、Can f 1 や Can f 2 の量も大きくばらつき、1製品からは Can f 1 も Can f 2 も検出されませんでした。著者らは、診断の精度に悪い影響があるおそれがあると述べています。

米国の研究(Chinoy ら、2005年、*Clin Mol Allergy*)は、呼吸器のアレルギーがある118人(3か月〜58歳、平均12歳)で、皮膚テストと血液検査(当時のRAST法)を比べました。犬と猫は90人ずつです。2つの検査の結果が一致したのは、犬52.2%、猫62.2%でした。皮膚のプリックテストが陽性だった人のうち、血液検査が陰性だった割合は、犬93%、猫57%です。研究は20年以上前のもので、著者らも、現在の感度の高い血液検査にはそのまま当てはめないよう注意しています。

読者にとっての意味は2つです。犬アレルギーの人は、犬の検査が陰性でも「犬は大丈夫」とは決められません。猫のほうが確かめやすい面はありますが、猫でも2つの検査の結果が食い違うことはあるので、検査だけで決めないでください。なお、日本で使われている検査液の質は、私たちは確認できていません。ここで紹介したのは欧州と米国の話です。

犬だけの落とし穴|オス犬と「低アレルゲン犬種」

ピンクのブランケットの上に座る白いトイプードルの背中を、ブラシでとかす手元

犬には、猫の話では出てこない落とし穴が2つあります。オス犬にだけ反応する人がいることと、「低アレルゲン犬種」の看板が当てにならないことです。

オス犬にだけ反応する人がいる

Can f 5 は、オス犬の前立腺で作られるたんぱく質です。デンマークの研究チーム(Schoos ら、2020年、*J Allergy Clin Immunol Pract*)は、犬への感作歴がある15〜18歳の22人を調べました。このうち7人は Can f 5 だけに感作していて、全員がオス犬のフケ抽出液で皮膚テスト陽性でした。メス犬の液で陽性になったのは1人です。目に液を垂らす誘発試験でも、オス犬の液で5人、メス犬の液で1人が反応しました。複数のたんぱく質に感作していた8人では、オスとメスで差がありませんでした。著者らは、Can f 5 だけに感作した人は、メス犬には耐性がある可能性を示唆すると結論づけています。

ただし、22人・7人と極めて小規模な試験です。去勢したオス犬でどうなるかは、確かめられませんでした。「メス犬を選べば大丈夫」という話ではなく、Can f 5 だけに反応する人に限った話です。

猫でも、オスのほうが Fel d 1 が多いことを示す小さな実験があります(Jalil-Colome ら、1996年、*J Allergy Clin Immunol*)。成猫のオス5頭とメス5頭の比較で、統計的に差が出たのは1回目の実験だけでした。猫では性ホルモンによる調節が、犬では前立腺由来のたんぱく質が背景にあり、仕組みは別です。

「低アレルゲン犬種」の看板

オランダの研究チーム(Vredegoor ら、2012年、*J Allergy Clin Immunol*)は、「低アレルゲン」とされる犬種(ラブラドゥードル、プードル、スパニッシュウォータードッグ、エアデールテリア)と、ラブラドール・レトリーバーや対照の犬を比べました。毛の Can f 1 は、「低アレルゲン」側のほうが平均2.26 µg/g と、そうでない犬の0.77 µg/g より高い結果でした。家の床のほこりは、ラブラドゥードルだけが低めで、そのほかに差はなく、空気中の量にも犬種間の差はありませんでした。犬種ごとの差は、同じ犬種の中でのばらつきより小さく、著者らは「低アレルゲンと分類できる根拠はない」と結論づけています。

猫の品種論と同じ構図です。総説(前出の Chan と Leung)も、猫にも犬にも、すべてのたんぱく質を無効にしない限り「低アレルゲン」と呼べるものはいないと述べています。AAFA のページも、犬猫の品種によって耐えやすさが違う人はいるが、本当にアレルギーを起こさない犬猫はいない、と書いています。看板より、個体と人の組み合わせです。

犬アレルギーの人が猫を迎える前に確かめる5つの順番

診察室で白衣の医師と向き合い、ノートにペンでメモをとる女性

迎える前の確かめ方は、主治医への相談、猫と犬の両方の検査、陰性でも決めない、猫と過ごして確かめる、迎えたあとも様子を見る、の順です。

欧州のコンセンサス文書(前出の Dávila ら)は、動物を避けることが最も勧められる対策だと書いています。同時に、避けるのはしばしば不可能で、大きな心理的負担が伴うとも書いています。避けられないなら、何に反応しているのかを知ったうえで決めるのが現実的だと、私たちは考えます。

  1. ぜんそくのある方、症状が重い方は、迎える前に主治医へ相談する。 息苦しさやぜいぜいする呼吸が出たときは、受診を優先してください。症状の見分け方は猫アレルギー症状の見分け方と受診目安に書いています。
  2. 医療機関で、猫と犬の両方への反応を調べる。 複数に反応するかもしれないときは、成分別の検査が受けられるかも聞いてください。保険については、東京センタークリニックのコラム(2026年2月5日付)が、人のアレルギー検査は基本的に保険適用(3割負担の場合)で、症状がない場合や非常に多くの項目を調べる検査は全額自己負担になりうる、と説明しています。扱いは医療機関や検査の内容で変わりうるので、飼う前の確認がどちらになるかは、受診先で確かめてください。
  3. 検査が陰性でも、「大丈夫」と決めない。 犬は検査で見つけにくく、猫でも皮膚テストと血液検査の結果が食い違うことがあります。
  4. 医師と相談したうえで、猫と過ごして症状を確かめる。 短い時間で症状が出なかったことが、長く暮らして大丈夫という保証になるとは限りません。アレルゲンは空気中や衣服にも残ります。
  5. 迎えたあとに症状が強くなったら、無理を続けず受診する。 家族の中に子どもやぜんそくの方がいるときは、全員の分を確認してください。

当社は人のアレルギー検査や皮膚テストは実施していません。検査は医療機関で受けてください。見学は事前予約制で、流れはお迎えの流れにまとめています。今いる子猫は子猫一覧から見られます。犬と猫のどちらを迎えるか迷っているときは、犬と猫の違いも参考にしてください。

よくある質問

Q1. 犬アレルギーですが、猫は飼えますか?

飼える・飼えないは、この記事では言えません。犬だけに反応する人もいれば、猫にも反応する人もいます。米国の大規模調査では、猫と犬への IgE が同じ人で高くなりやすい傾向が示されています。まず医療機関で猫への反応を調べ、医師と相談したうえで、猫と過ごして症状を確かめてください。ぜんそくがある方は、迎える前に主治医に相談してください。

Q2. 猫アレルギーでも、犬なら大丈夫ですか?

猫だけに反応する人もいるので、犬なら大丈夫な場合もあります。ただ、猫と犬のあいだには、アルブミンやリポカリンという交差反応が起きうるたんぱく質があり、両方に反応する人もいます。犬の皮膚テストは液が標準化されておらず、検査が陰性でも決めきれません。オス犬にだけ反応する人もいます。犬の検査結果と、実際の接触の両方で確かめてください。

Q3. 猫アレルギーと犬アレルギーは、どちらが多いですか?

決着していません。欧州で吸入性アレルゲンを疑って受診した成人では、猫26%・犬27%と推定されています。アジアの調査は猫が多い地域も犬が多い地域もあり、向きが一定しません。日本の犬猫別の全国データは、確認した資料の中にはありませんでした。「猫は犬の2倍」も、出典とされる団体の現行ページには見当たりませんでした。

Q4. 犬アレルギーと猫アレルギーに、同時になることはありますか?

あります。米国の大規模調査では、猫と犬に対する IgE が同じまとまりに入り、相関係数は0.78以上でした。血清アルブミンやリポカリンというたんぱく質を介した交差反応も報告されています。ただ、同時に起きる割合を示せる確かな数字は、確認できていません。

Q5. 「低アレルゲン」の犬や猫を選べば大丈夫ですか?

選べば大丈夫とは言えません。「低アレルゲン」とされる犬種の毛に Can f 1 が多かった研究があり、犬種ごとの差は犬種内のばらつきより小さい結果でした。AAFA も、本当にアレルギーを起こさない犬猫はいないとしています。猫の品種についての論文の読み方は、猫アレルギーでも飼える?低アレルゲン品種と7つの対策で整理しています。

Q6. 犬猫アレルギーは治りますか?飼っていれば慣れますか?

治ると言い切れる段階ではありません。欧州のコンセンサス文書は、免疫療法は有望だがさらなる研究が必要としています。総説は、猫の皮下免疫療法には明確な効果が示されている一方、犬は「効果がありうる」段階と整理しています。環境再生保全機構のコラムは、犬や猫のアレルゲンに対する免疫療法は日本では保険適用外で、ごく限られた専門施設でしか実施されていないと書いています。「飼い続ければ慣れる」と言える根拠は、今回確認した資料にはありませんでした。治療は医療機関で相談してください。

まとめ

犬と猫のアレルギーの違いを論文で確かめ直して、裏付けが取れたのは次の3つでした。

  • 猫は主犯のたんぱく質が1つ(猫への IgE 反応の88%が Fel d 1)、犬は主犯がばらばら(37人中70%が Can f 5 に反応し、うち14人は Can f 1・2・3 に反応せず)
  • 犬の皮膚テスト液は標準化されておらず、検査で見つけにくい
  • 犬には、オス犬にだけ反応する人がいる

「猫の粒子のほうが小さい」「猫は犬の2倍」といった説明は、確かめた範囲では支える論文が見つかりませんでした。「猫のほうが症状が出やすい」という印象そのものは、否定も確認もできていません。片方だけの人も両方の人もいて、どちらかは個別の検査と、実際の接触でしか分かりません。

猫と暮らしたい気持ちと、体の心配のあいだで迷うのは自然なことです。焦らず、1つずつ確かめてください。当社の見学は事前予約制で、流れはお迎えの流れに書いています。

出典

論文の書誌と要旨は、2026年10月3日に PubMed で確認しました。本文まで読んだのは Chan と Leung(2018)、Chinoy ら(2005)、Salo ら(2014)で、それ以外は要旨の確認にとどまります。AAFA・環境再生保全機構・東京センタークリニック・ペット情報サイトのページも、同日に開いて該当の記述を確認しました。アジアの調査の数字は、Chan と Leung の総説からの孫引きで、原著は確認していません。

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  21. 独立行政法人 環境再生保全機構. ドクターの小話WEB版 動物アレルギーぜん息~「ペットを飼いたい」と思ったら④(全4回). すこやかライフ. https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202506_1/
  22. 東京センタークリニック. アレルギーがあってもペットと暮らせる?ペットを飼うときのアレルギー検査とは(2026年2月5日付). https://tokyo-center-clinic.or.jp/column/allergy-test-pet/

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